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株式会社セントラルカンパニー、力武一郎社長 TOPから学ぶ

大分セントラル、力武一郎社長

力武一郎/株式会社セントラルカンパニー 代表取締役。大学卒業後、父が経営する株式会社大分セントラル(現株式会社セントラルカンパニー)に入社。その後新卒採用の開始、360度人事評価の導入、社内研修など、様々な改革を行い、家業から企業へと発展させてきた。現在では大分県にてパチンコホール、ボウリング場、保育所の経営をする。ぱちんこ依存問題に取り組むリカバリー・サポート・ネットワークの発起メンバーでもある。

株式会社セントラルカンパニー(以下、セントラルカンパニー)は、大分県にてパチンコ店セントラルパークを4店舗、ボウリング場、保育所を運営する企業である。熱心な社員教育、地域社会への貢献などの功績により、大分県の学生の就職先人気ランキング12位に入るなど、地域社会から支持される企業となっている。そんなセントラルカンパニーを率いる力武氏に、社員教育についてインタビューを行った。

社員は家族、生涯一緒にやっていこう

強い組織をつくるためには、強いメンバーが必要である。そのために、セントラルカンパニーでは社員の自己成長を促すことでモチベーションを高め、高いパフォーマンスを発揮できる環境を作ってきた。

その一例となるのが、2011年に新規出店したセントラルパーク豊後高田店での出来事である。豊後高田店は、セントラルカンパニーにとって3店舗目の店舗であり、10年振りとなる新規出店だった。

同社代表である力武氏はそのオープニングスタッフに4名の若手スタッフを抜擢した。店長の経験はないながらも将来を期待され店長に抜擢されたメンバー、新卒で入社したばかりのメンバーなど、現状の実力以上の役割を任せることで、成長を促そうという人事だった。

“新店の成功はこの4名のチームワークにかかっている”そう考えた力武氏は、オープンまで40日というタイトなスケジュールの中、力武氏自身が研修講師を務める3泊4日の理念研修を行った。

研修の最終的なゴールは“店舗コンセプトを決めること”。オープニングスタッフを任せられたことに自覚を持ち、理念を理解し、ビジョンを共有する。力武氏に何度も叱咤激励されながら、つくりあげたコンセプトは、“愛情はいつもここにある”だった。

研修当初はお互いに遠慮のあったメンバー。本当の意味でのチームには信頼関係が必要、そのためにはぶつかり合うことも必要であるとの力武氏の熱いメッセージに、次第に心を開きチームとしての結束が強まっていった。そうして迎えたグランドオープンは成功。その後のセントラルカンパニーの発展のターニングポイントとなった。

セントラルパーク豊後高田店オープン前の理念研修にて

「自己成長」が全ての人のモチベーションにはならない

自己成長を促すことでモチベーションを高めようとする力武氏の方針は、これまで多くの成功事例を作ってきた。しかしここ数年、“自己成長だけが全てではないのではないか”と考えるようになったという。

「私は自己成長を促すことが、社員のモチベーションアップにつながると考えてきました。しかし、そうじゃない人もいるのだということを感じるようになりました。例えば、当社にはシングルマザーがたくさん働いています。

彼女たちは子育てをしながらとても一生懸命働いてくれています。ですが、自己成長の話をすると『難しい』と言う人も多いです。『社長、よくわからないです』なんて言われてしまう。つまり、自己成長することにモチベーションを感じてはいないんです。かといってやる気がないわけではない。だったらそういう人にも共感できるような、別の方向性でモチベーションとなるものを示すことが必要なのではないかと考えるようになりました」

何がモチベーションになるか、人としての根本的なところは教育によって変わり得るが相当な労力がかかる。ある意味で教育の限界を感じるようにもなったと言う。
そしてこれらの事実は力武氏にとって、改めて今後を考えるきっかけになっていった。

モチベーションがなくなった

教育について改めて考えを深めていく中、力武氏自身にある変化が起こった。

「2014年の後半あたりに、モチベーションがなくなったんです。つまり、やる気がない(笑)。とはいってもいつも通り会社に行って仕事はしていたので、私の変化に気づく人はいませんでした。不思議なもので妻だけが私の変化に気付いていました。

きっかけになったのは、ある研修を受けたことでした。その研修では、エゴグラムで自分のタイプを知るということを行いました。その結果、私のタイプは『反抗的な子共』でした。こういうタイプは、リーダーシップがある反面、自己顕示欲が強かったり、人に傲慢を強いたりする。

確かにそういう面があるなと思いました。自分がこうだと思うことをやり遂げたいというところもあるし、社員に対しての想いが強ければ強いほど、時に厳しくなることもありました。それによって、よかった面もたくさんあります。ですが、自分がよいと思っていることが必ずしも全員にとってよいことではない。

今の自分の存在は組織のリーダーとしてどうなのだろうと疑念を持つようになりました。そこで、そんな自分を変えようと思いました。今までの自分を変えるのって難しいです。でも努力した結果、変わることができました。でもその頃からモチベーションがなくなってしまったのです。唖然としました(笑)」

理念を再構築しよう

モチベーションがなくなるということは、目指すべきものがない状態に等しい。これまで目指してきたことに対し、熱量を持てなくなってしまうからだ。そこで力武氏は新たに目指すべきものを考えるようになった。

「今後も組織のリーダーとして会社を発展させていきたいという想いは変わらない。でもこれまでの方法だけではだめで、やはり別の方向で社員のモチベーションを高める方法を考え、実行する必要がある。そう考えたときに、やっぱり理念だなと思うようになりました。みんなが納得して共感し、モチベーションとなるような理念を再編しようと考えたのです。

  • ・パチンコは何のために存在するのか
  • ・お客様のためといっても、どういうことがお客様のためになるのか
  • ・どんなパチンコ店がお客様に支持されるのか

そんなことを突き詰めて考えていくうち、やはり顧客満足の追及を目指そうというところに行き着きました。結局、利己的なものというのは、人の心を動かすことはできません。人のためであるから、みんな心が動かされるのだと思います。社員にとっても、自分のためであるが難しい自己成長よりも、お客様のためである顧客満足の方が、共感しやすいです。

お客様のためになるサービスを提供すれば、ありがとうという感謝の言葉を頂ける。それがやりがいになります。何についてがんばればいいのかが、わかりやすいのではないかと考えました。それに、これまでのパチンコ業界は、お客様の方向を向いてこなかったと私は思っています。だからこそ、本当にお客様のためになることをしたいと考え、顧客満足の追及を理念としました」

ずっと後ろめたさがあった

理念を再編し、「顧客満足の追及」を目指すことで社員のモチベーションを高める方針へと変化していったセントラルカンパニー。しかし、それまで顧客満足を考えてこなかったわけではない。むしろ力武氏はパチンコの持つ悪い部分をなくし、よい部分を伸ばしたいとこれまでも様々な活動を行ってきた。そのひとつが、パチンコ依存問題への取り組みである。

「パチンコはものすごく高コスト体質になりました。機械台も設備も高い。その資金を稼ぐために、お客様にとってお金のかかる遊びになっていき、大衆娯楽から大きくかい離してしまいました。それがずっと、私の中で後ろめたさになっていました。

トヨタ自動車が「業の最適化」を目指しています。これはよい部分を最大化し、悪い部分を最小化するという考え方です。車でいうと、よい部分はドライブの楽しさ、便利さなど、悪い部分は排気ガスや交通事故などです。私はこの考え方にとても感銘を受け、パチンコも最適化したいと考えるようになりました。

それもあって、リカバリー・サポート・ネットワーク(ぱちんこ依存問題相談機関)を立ち上げました。パチンコの悪い部分の一番は、依存問題だと考えたからです。依存は個人の問題なので、なくなることはありません。でもそうなったときの頼れる場所をつくりたかったんです」

お客様が楽になった

パチンコのよい部分のひとつは、身近にある娯楽、ということである。しかし、お金のかかる遊びとなり、身近にはあるけれど誰もが気軽に遊べる娯楽ではなくなっていた。そんなパチンコ業界に変化が訪れたのは、1円ぱちんこの登場であった。

「1円ぱちんこができたときは興奮しましたね。パチンコはお金のかかる遊びになりましたが、それを是正する術がありませんでした。だから今は楽しいです。利益を出すのは厳しいので、以前のようには儲かりません。でもどうやって利益を出すのか、難しい分やりがいもあります。

それに、お客様が楽になったように思います。一時は憑き物につかれているような感じでした。朝から並んで、開店と同時に台を奪い合って。しんどいですよね。1円ぱちんこができて、店の雰囲気はずいぶんやわらかくなりました」

遠くの孫より近くのCP

セントラルカンパニーには、力武氏が理想とするパチンコホールを実現している店舗がある。それがセントラルパーク津久見店である。

「津久見店がある地域の住民というのは、過半数が60歳以上の高齢者です。そのうちの3割が一人暮らしです。さみしいし、やることもない。昼間から家でお酒を飲む人も多くて、酒販の量が多いというデータもあります。そういった環境にある津久見店の役割は大きいです。

スタッフは高齢のお客様に対して、孫のようにあたたかく接しています。遠くの孫より近くのCP(セントラルパーク)。そんな想いです。お客様も孫に会いに来る感覚で遊びに来てくださいます。そのために無料のシャトルバスも走らせています。私はよくスタッフたちに、寿命より先に貯金が尽きたら悲劇だよという話をしています。

だからスタッフたちは、ちょっとお金を使いすぎているなというお客様がいたら、『今日使いすぎじゃない?貯金大丈夫?考えて打たんとね』と声をかけています。そういった取り組みによって、津久見店は地域社会から必要とされる店舗になっています。そしてそれは、スタッフたちのモチベーションにもなっています。以前、この取り組みを紹介したくてぱちんこ情熱リーグに出場しました。

実は決勝大会に参加したスタッフのうち、女性はほとんどがシングルマザーなんです。最初は参加するのを嫌がっていました。決勝大会に参加するためには準備が必要です。家事や育児もある中で、通常の業務と並行して準備することができるか不安だという声もありました。でも説得して、参加することになりました。

優勝大会当日、彼女たちが一生懸命大きい声を出して、笑顔で発表する姿を見てとても感動しました。結果的には優勝はできなかったけれど、大会で得られたものは大きかったです。自分たちが日々行っている取り組みを振り返る機会になり、スタッフたちもより一層、CPで働くことに誇りを持ってくれるようになりました」

任せることは会社の発展につながる

強いリーダーシップで組織をひっぱってきた力武氏。全社員との毎月1時間程度の個人面談や、グランドオープン時の理念研修では自ら講師を務めるなど、社員教育においても自ら動くということを続けてきた。だが、ここ数年は少しずつ部下に任せるようにしているという。

「私一人で100できることがあるとします。それを部下に任せたら50しかできなかった。でも同じように50できる部下が他にたくさんいれば、私一人で100やっていたことよりも、もっと多くのことができる。これはマネジメントの本質だと思います。そしてやはり任せるということが、会社の発展につながっていくのだと思います。

以前は私が全社員と面談していました。でもそれだと何か問題があったとき、上長ではなく私に言ってくるようになります。その方が是正のスピードが早いからです。でもそれだと管理職のモチベーションが下がる。だからここ最近は、部長・店長は私が面談をして、それ以外は任せています。

でもやっぱり任せるというのはじれますね。自分でやりたい気持ちはあります。でも私もいい具合にじじいになってきたから(笑)。完璧主義だったけれど少し余裕がでてきました」

いろいろあっていい

完璧さを求めすぎなくなったというのは、力武氏にとって大きな変化だった。

「当社に入社してくれた社員との出会いは大切な縁ですから、一人ひとりの成長を見守っていきたいという想いは変わりません。自己成長を応援したいという気持ちも持っています。だから成長意欲の高い人と働きたい。

ですが、人間ってそんなに完璧なものじゃありません。同じ方向を向いてほしいから、社員には共通の価値観を持っていてほしいけれど、それ以外は多様性があっていいのだと思います。お互いのいいところを認め合って、それぞれの得意なことを活かして、組織として成長していけばいい。

採用に関する考えも変わってきました。以前は入社したら辞めてほしくないから、迷ったら採用していませんでした。でも今は迷ったら採用するようにしています。他にやりたいことを見つけて辞める人がいてもいいのではないかと思うようになったからです。それがいいのか悪いのか、答えが出るのは何年後かになると思います。」

人材教育も経営も“おもしろい”

教育に力を入れてきた力武氏に、改めて教育について今感じていることを聞いてみると、その答えは“おもしろい”だった。

「人材教育は奥が深いです。答えはないし、人によって何に反応するかは異なります。だからおもしろいです。それは経営も同じです。1円ぱちんこの登場によって、パチンコは大衆娯楽へと回帰してきました。私はこれが本来の姿だと思います。企業としては利益を出すのは難しいです。でもそこがおもしろい。まだまだやれることはたくさんあります。だから今は本当に楽しいですよ」

いい組織には愛がある

これまで社員の自己成長をサポートすることでモチベーションを高め、より強い組織へと成長させてきたセントラルカンパニー。しかし、自己成長が必ずしも全員のモチベーションにはならないことを感じ始め、顧客満足の追求を目指すことへとシフトしてきた。

そこには、ただ会社を大きくしたいという想いだけではない。社員がセントラルカンパニーで働くことを誇りに感じ、やりがいを持って働くことで、会社を発展させていきたいという力武氏の想いがある。

「いい組織には愛がある」と力武氏は語る。地域社会、顧客、社員に対し、深い愛情を持って向き合う力武氏だからこそ、時に厳しくもお互いを励まし合える愛のある組織を築き上げてこられたのだろう。

生き残っていくためにはある程度の規模が必要との考えから、今後もさらなる発展を目指す同社。そのためにも、力武氏の目指す方向に共感し、共に動いていける仲間を増やしていきたいという。

恒例になっている地元大分の児童養護施設への支援活動。力武氏もサンタクロースに扮して訪問する。

―おわり

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