こんにちは、PX通信のとみおかです。
今週はパチンコ依存問題に取り組む、NPO法人リカバリーサポート・ネットワークの西村代表理事のインタビューです。

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パチンコ依存問題 前編

ストレスの多い社会の中で、パチンコのような身近な娯楽サービスは、大きな役割を果たしています。しかし残念なことに、借金や失業などの経済問題、育児放棄や家庭内暴力などの虐待・暴力問題、依存や抑うつ・自殺などの精神医学的問題などの社会問題がパチンコ業界の周囲で起こっているのも事実です。
今週は、パチンコ依存問題に焦点を当て、その第一歩として無料電話相談窓口を開設している「NPO法人リカバリーサポート・ネットワーク」の代表理事である西村さんのインタビューをお送りします。

西村 直之さん
NPO法人 リカバリーサポート・ネットワーク代表理事
琉球大学卒業
薬物依存症・アルコール依存症を専門に扱う精神科医であり、現在はあらかきクリニックの院長を務めると同時に、パチンコ依存の悩みを抱える人達からの電話相談を受けるためのNPO法人「リカバリーサポート・ネットワーク」の代表理事を務める。パチンコホールに啓発ポスターを貼り、直接パチンコユーザーに相談を呼びかける活動から、講演会やセミナーでパチンコ依存についての情報を発信するなど幅広い活動を続けている。

リカバリーサポート・ネットワークへの相談件数

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―まずは「リカバリーサポート・ネットワーク」設立の経緯を教えてください。

車内放置事故や多重債務などの問題が出てきた頃、九州の方にあるパチンコホールさんで、自分達が働いている環境の周りでこういう事があったのに何もしなくて良いのだろうかと真剣に問題提起している方達がいたんです。その中のホールの1つが、ギャンブルに関して問題を抱えた人達の回復を支援するワンデーポートというNPO法人のポスターを貼ったんですね。すると、2人の顧客から相談を受けた。本当にこういう問題を抱えている人がいて、助けを求めているということを実感したんです。その方の働き掛けがきっかけになり、2000年初頭に全日遊連(全日本遊技事業協同組合連合会)の中で依存問題研究会というグループが出来ました。研究会からは、ワンデーポート経由で以前から薬物やアルコール依存の支援をしていた僕のところに協力の相談がきました。医療現場では、薬物やアルコールに比べてギャンブル依存の相談は極端に少ないんです。実際は薬物依存よりも悩みを抱えている人数は多いはずですが、なかなか出会う機会が少ない。だから依存と言えど同じ枠組みではなかったんです。正直言うと僕もどうすれば良いか分からない状態からスタートでした。

―なるほど。まずは何から始めたのですか?

まずはお客様が本当に何を求めているのか、どういう問題が起こっているのかを電話相談で聞きましょうと提案しました。どんな相談がくるか分からないですが、聞いていけば問題自体は分かりますし、今までの知識や、海外での依存症問題などの情報もあるので、できることから対策していこうと。そして業界に対してどんな問題があるかフィードバックしていく。そして、業界がユーザーを守ることに取り組んでもらえるようにするということ、その2つを考えていこうと思いました。

今までパチンコ依存の人とはあまり出会ったことがなかった。つまりその人達は相談自体どこにもしてないのではないか、と考えました。ただ、意外と相談が来るのではないかと予想はしていたんです。薬物依存やアルコール依存の人たちは酔っていることもあり自分からは相談することはほとんどないですが、パチンコは素面ですから、一瞬一瞬で後悔し、冷静になる場面があるのではないかと。そんな時にポスターを見れば電話をかけてくるのではないかなと思いました。

―そこから電話相談というスタイルが確立されたのですね。

はい。まさに1つ1つ作っていかなくてはいけませんでした。最初の5年間は実験的な側面も強かったですね。何しろ確かな例が無いので、ある程度仮説を立てて、それを証明していくしかないんです。
それに、プロジェクトを推進してくれているのは、言わば業界の上の組織ですが、実際に協力して欲しいのはポスターを貼ってくれる店舗さんです。業界全体の景気も下火になっていく中で、業界として依存問題に取り組んでいるものの、全体の共通意識としては浸透しにくい難しいバランスの中で作業をしていましたね。まだまだ今のように全体で支えるという形ではなかったです。メーカー側とホール側で意識も違いますし、ホール内の中でもやはり温度差はありますよね。ただ、全日遊連はパチンコ・パチスロ21世紀会を通して、業界全体の問題として提起をするというスタンスを当初から崩さずにいてくれて、それは大変有難かったです。

―プロジェクトを始めた頃のホールさんの反応はどうでしたか?

一言で言うと反応は鈍かったです。ポスターを貼ってくれている店舗さんは、最初の3~4年は恐らく全体の1割程度だったと思います。最初動き出した時は、元々呼びかけてくれていた大分県のホールだったので、大分県下のホールの人達に声をかけて視察に来てくれました。そうやって直接会ってくれた人達は賛同してくれたのですが、逆に会った事のない人達からはほとんど問い合わせがない状態でした。全日遊連の粘り強い広報や、セミナーでの啓発に加えて、PCSAなどはバスを借りて視察に来てくれました。このような積み重ねと理解の裾野の広がりによって、徐々に相談件数も増えていきました。企業が必要経費で動くようになった事は意義があると思います。ただ最終的には大手だけではなく、地方の山の方にあるホールにまで浸透することが目標です。まだ温度差はありますが地道にやっていけば、という感触があります。逆を言えば、こういったリスクマネージメントが出来ないホールは、正直この先厳しいのではないかと思います。

―他業界での依存問題との違いはありますか?

今まで依存問題に対して、業界全体が共有したのは初めてなんです。例えば、アルコール依存について啓発するのはメーカー単位。酒造メーカーと居酒屋が協力して問題に取り組むということはありません。恐らく世界的に見ても例が無いと思います。例が無いからこそ過去のことにとらわれずに、できることを実践出来たと思いますね。

アメリカなどのカジノがある国は行政の中に専門のセクションがあります。しかし、日本の場合は、依存問題の専門の監督官庁はありません。私たちの活動も、警察庁の指導などではなく、全日遊連が自主的に発案し、それを行政が評価して、今に至っています。昨今の流れから、私たちの活動は、警察庁が主導してた依存問題の取り込みだと思っている業界関係の方もいますが、実は業界が自ら率先して取り組んでいるのです。本来なら行政の指導は業界にとって負担ですが、業界としてそこまでやるんだ、という決意だと思います。それを5年6年と続けた結果、土俵が出来たと思います。規制強化への対応だけでは、客離れが進み、残ったお客様を惹き付けるために複雑化したり、ヘビーユーザー化させてしまう。それにより、さらに規制が必要になる。その結果、業界が縮小してしまう。これは今年のレジャー白書でも明白です。

―続きは後編で!

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