「中途採用をしない理由」

①人が足りているので、採用する必要がない
②過去、中途で採用した人材との間にトラブルや何らかの嫌な思い出があり、いいイメージがないから採用したくない

③新卒採用やアルバイトからの社員登用で入社したプロパー社員しか欲しくない

今回は③についてケーススタディをしていきます。

③新卒採用やアルバイトからの社員登用で入社したプロパー社員しか欲しくない

D社 19店舗
「一切他社経験のない新卒社員の方が、素直で指導がしやすい。
会社の理念や方針を浸透させて、全社が一つの方向に向かうためには、
プロパー社員だけで組織を作るのが一番いいんです。」

早速ですが、上記のように話していたD社の後日談をご紹介しましょう。

D社の社長は強烈なカリスマを持った創業社長です。

新卒採用活動も、社長が前面に出て会社説明や面接を行い、学生に企業の魅力を伝え続けました。

その結果、社長のようになりたい、社長のために働きたい、という新卒社員は年々増えていきました。

そして、新卒採用を始めてから数年後、社長が「右!」と言えば、寸分違わず全員が右を向く組織が出来上がったのです。

しかし、理想どおりの完璧な組織だと思ったのも束の間、社長は組織に違和感を感じ始めます。

「会議やミーティグの席で、反対意見が出ないのです。
私が右と言えば、「左の方がいいんじゃないでしょうか。」と言う者は誰一人としていません。
・・・というか、言えないのではなくて、左の方がいいなんて思ってもいないのです。

まっさらな新卒社員は、会社の理念や社長の考え方を教え込むにはとても楽でした。
他を知りませんからね。

だけど、それ以上にはならない。私の考えが全てになってしまい、新しいアイデアや発想が生まれないのです。

最初はそれでいいと思っていましたが、企業が発展していく上では、他社で色んな経験をされた方、うちにはない新しい思考や考えを持ち込んでくれる人が必要です。

右へ倣えの組織に刺激を与えることが必要なんです。」

その後D社は中途採用を始められたのですが、一番最初に採用したのは、異業種出身の人材でした。

これまでとは全く違う視点を取り入れたことで、これまで当たり前だったことが変わり始めているそうです。

また、余談ですが、D社のように店長や幹部を始め、組織の大半が新卒プロパーの人間で構成されている企業は、全国にもいくつかあると思います。

早くから新卒採用・教育に力を入れ、人材がしっかり育って定着する組織を築き上げることはすごく大変な事だと思います。

それでもそういった組織が意外ともろく、崩れ去るケースを時々目にします。そしてそれは、いわゆる「代替わり」でカリスマ社長がいなくなったタイミングに訪れます。

社長の話を聞いて、社長に憧れて入社を決め、社長のようになりたい、と信じてついてきたプロパー社員で構成されている組織は、その対象が急にいなくなってしまった時、一気にぐらつき、崩れてしまいます。

憧れ、目標の喪失感、後任者への不信感、新しい体制への抵抗感など、一気に不満が噴出し、退職者が続出するケースを、本当によく見てきました。

これは組織として強かったわけではなく、単にカリスマ社長の力が大きかっただけで、経営としては失敗と言わざるを得ないのではないでしょうか。

本当に強い会社というのは、社長が変わったぐらいではビクともしません。

新卒プロパーは他社を知らないわけですから、こういった状況の変化に対応できない、という弱さがあります。
逆に他社や他業種で揉まれてきた中途社員は、世の中の厳しい現実も理解し、受け入れるタフさが比較的あると言えます。

だからこそ、中途をうまくMixさせ、きれいでスマートな組織だけでなく、図太い強さを兼ねそろえた、本当の意味での強い組織を追い求めるべきだと思います。

D社の社長の言葉にもありましたが、まっさらな新卒社員を指導・教育することは、経験豊富な中途社員に比べて、ある意味楽なことでしょう。

私も自身のマネジメント経験から、D社社長の、新卒は素直で育てやすいという言葉には非常に共感しました。

しかし、「素直で育てやすい」ことが全てではありません。
楽な方に逃げていては、企業の発展はありません。

新卒採用と並行して、中途採用を巧く使いこなし、自社の企業力へと転換できる企業こそが、「強い」企業と言えるのではないでしょうか。

―続きは後編で!

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