①人が足りているので、採用する必要がない
②過去、中途で採用した人材との間にトラブルや何らかの嫌な思い出があり、いいイメージがないから採用したくない

③新卒採用やアルバイトからの社員登用で入社したプロパー社員しか欲しくない

私がこれまで500社以上の経営者・人事担当者の方に聞いた「中途採用をしない理由」はほぼこの3つに集約されます。

後編では①をケーススタディをしていきます。

①人が足りているので、採用する必要がない

A社 3店舗
「うちは3店舗しかないし、今後も当面出店の予定はありません。
人数は十分足りていて、辞める人もほとんどいませんから、わざわざ中途採用をする必要性を感じないんですよ。」

一見、もっともな理由のように思えますが、本当にこの企業は中途採用の必要がないのでしょうか?

実はこちらの企業、よくよくお店を分析してみると、ホールはまわせている状態ではあるけれどドル箱交換やランプ対応に追われて、それ以外のことが何も出来ていない、というお店だったのです。

お客様への接客サービスはもってのほか、通路に落ちているゴミや空き台の灰皿周りの清掃にも手が回らない状態。
ランプ対応を優先するあまり、お客様を押しのけて走っていく、という場面も見られました。

組織力についても、店長以外の役職は勤続年数に応じて何となく就けられていて、それぞれの役割はとても曖昧。
ホールを管理し、スタッフを指導・教育するべき副店長や主任に、その責任感はありません。

そして人が辞めないのは、身だしなみや接客サービスに対してうるさく言われることがない、「楽」な職場だから。
正社員の顔ぶれはここ何年も変わっておらず、会議も毎回同じ、形だけのもの。
チャレンジ、変化、前進、という言葉からは程遠い現状にありました。

この会社が、「強い」組織・企業になるとはとても思えません。
『人が足りている・・・』 本当にそうなのでしょうか?

人材の成長がなければ店舗力の向上もありません。
イベントや出玉で差別化が出来なくなった今、徐々にお客様の足が遠のいてしまうことは、火を見るよりも明らかです。

明らかに「人が足りていない」ことになぜ気がつかないのでしょう?

経営者が、強いお店、強い企業にしたい。と本気で思うのであれば、この現状にメスを入れるべきです。

このような組織改革には、既存社員の意識改革と平行して、必要なスキルを持った新たな人材を採用することが有効です。
統率力、人材育成・指導力、接客サービス力、企画力など、足りていない点、強化したい点を外部から取り入れることで、改革スピードが加速します。

ちなみにその後、このA社は業績が下がるにつれ危機感を覚え、最終的には接客指導に長けている人材を2名、主任職として採用しました。

改革が進むにつれ、これまでの「楽」な職場ではなくなってしまう、と感じて去って行く人も出て、さらに一般職での新たに若手の採用も始めました。

この以前のA社のように、「人材が十分に足りている」というのは、実は、単に人数がいてホールがまわっているというだけ、という企業様は意外と多いように感じます。

「(お客様に選ばれるお店であるために必要な)人材が十分に足りている」のかどうか?役職者が本来の職務を遂行しているのか?それに値する人材はいるのか?という視点でお店を見てください。
もしかしたら中途採用の必要性が見えてくるかもしれませんね。

先日、都内近郊に有する6店舗全てが優良店、という企業様の役員とお話をする機会がありました。

稼動も良く、人材も揃っており、借金もない。地元に根付いた営業でお客様からの支持も熱く、まさにSランク企業と言えるN社。
2%という離職率も、働きやすい企業を表しているかのように思えましたが、この離職率が問題だ、と話すY役員。

「早く10%まで引き上げたいんですよ。」

要は、離職率を上げたい、と言うのです。
「人が辞める会社にしたいのですか?」という私の問いに、「そうじゃないんだよ。ただ、2%という数字は会社の体質としてよくない。人間でいうとね、新陳代謝が行われていない状態なんですよ。自然退職を含め、ある程度の人の入れ替わりがないと、考え方が固まり、組織が腐って弱くなってしまう。会社が成長しないんです。」とおっしゃいました。

人事評価制度による抜擢人事や降格人事を行いながら、競争意識を持たせたり、中途採用による新しい血の投入をしたり、もちろん新卒採用も行いながら組織運営をしていると、ある程度の離職者も出てくるが、これは仕方のないことであり、10%程度をうまく保つことがある意味適性なのだ、とのこと。

つまり、必ずしも定着率が良い(=離職率が低い)ことが良いことではない、とはっきりおっしゃいました。

もしY役員が、この定着率の良い現状に、「人が足りている」と満足していたら、新しい採用や組織改革を行うこともなく、ここまで強いお店・企業にはならなかったかもしれません。

定着率が良すぎることはむしろ悪である、という、矛盾しているように見える言葉も、N社の店舗の状況、スタッフの質、地元と店とのつながりの強さを見せ付けられると、納得せずにはいられませでした。

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