TOPから学ぶSPvol.2株式会社ジョイナス高山愛子社長

京都府に本社を置く株式会社ジョイナス(以下ジョイナス)は、滋賀県に4店舗、石川県に1店舗を経営する企業である。 西日本最大級となる508台のスロット専門店へと改装した「アネックススロットステージ」や、ジョイナスにとっては新天地である石川県に新規出店した「ラッキー」が好調だ。 そんなジョイナスを率いるのは、パチンコ業界では珍しい女性社長である、高山愛子氏である。実は社長になる前は専業主婦。 『何もわからないけれど、毎日会社に来ることにした』そんなスタートから現在、どのような想いで経営を行っているのか、インタビューを行った。 ======= 高山愛子氏※ 株式会社ジョイナス 代表取締役 高校卒業後、化粧品会社に入社。結婚後は専業主婦となる。 2005年に株式会社イルコーポレーション(2000年設立)の代表取締役に就任。同年、株式会社ジョイナスへと社名変更。 現在は滋賀県に4店舗、石川県に1店舗を経営する。 ※文字化け防止のため「髙」の字は高と表記しています。 =======
社長としての最初の仕事は、「とにかく毎日会社に行く」ことだった
高山氏がジョイナスの代表に就任したのは2005年のことだった。 化粧品会社での勤務経験はあったものの、前社長から引き継ぐ形で代表取締役社長になる以前は、専業主婦だった。 「社長にはなりましたが、何がわらないかすらわからない状態でした。会社に行ってもやることなんてないので、最初は社長室でずっとソリティアをしていたくらいです(笑)。 でもそれでも『会社に行かなあかん』と思いました。 行くか、行かないか、という選択肢があるなら、行く。 社長になったからには、会社が何をやっているのか、まずは知りたいと思ったんです」 こうして高山氏の社長としての仕事は、「とにかく毎日会社に行く」ことから始まった。 「営業の話を聞いても、最初は『稼働って何?』というレベルでした。それでもわからないなりに、ここはこう思うけど、どう?と少しずつ伝えていくようにしました。 そうしてしばらく経つと、仕事というのは、役割分担が重要なのだということがわかってきました。 現場には現場の、社長には社長の役割があり、それぞれが任された役割を理解し、行動し、みんなでひとつになって会社をつくりあげていくのだと思います」 社名である「ジョイナス」とは、「join us」からきている。経営理念にも「Let’s join us」という言葉が入っているように、ジョイナスでは、「みんなでひとつのものをつくりあげる」ということが大切にされている。
300台の店舗に500人が行列!
「Let’s join us」の精神は、石川県での新規出店の成功にもつながっている。 石川県は大型店舗が並ぶ激戦区でもある。そんな中、ジョイナスが新規出店したのが、300台の「ラッキー」という店舗だった。 なんとグランドオープン当日には約500人が行列を作ったという。 「中には深夜1時から並んだというお客様もいらっしゃいました。 当日は予想以上のにぎわいにスタッフの手が足りず、私も玉箱運びを手伝う程でした」 営業方針を決め、何にどれだけ費用をかけるか、最終的な判断は高山氏が行う。 しかし、周りの意見、特に現場の意見を聞く機会を大切にし、尊重するという。 「以前、滋賀県にあるアネックススロットステージを改装した際に、広告に力を入れたことが高稼働に繋がったという成功体験がありました。 やはり知ってもらうことは大切です。お客様に来てもらって、お店の雰囲気を見て、接客の質を見てもらって判断してもらいたい。 会議でそう話すと皆納得してくれました。 そこでみんなでアイデアを出し合い、まずは広告を考えつく限り徹底的に行うことになりました」 店舗近くの交差点に夜でも目立つデジタルサイネージを設置。 野立て看板は、定期的に内容を変えて、目を惹くようにした。 滋賀県と比較して比較的安価で放映できるTVCMも行った。 普段はあまり行わないチラシも10万部配布した。 その他WEBでの告知など、ありとあらゆることを行った。 その一方で、初期費用はできるだけ抑えた。 出店が決まった時点で低玉貸し営業を行うことが決まっていたからだ。 「スロットは最新機種も設置しましたが、パチンコのバラエティコーナーにはあまりメジャーではない、もちろん私も知らないような台も設置しました。 当初は外壁の塗装を塗り替えようという案も出ました。 ですが、やりだしたらキリがないように思ったんです。そこでもう一度みんなで話し合い、結果的にはほとんど店舗のハード面はそのままでいくことになりました」 現在もラッキーでは高稼働が続いているが、今後も継続していくために気は抜けないという。 「以前、他の店舗を見に行ったときに、お客様に『この店の人か』と声をかけられたことがありました。 はい、と答えると、『えー店やな、ここなら負けてもえーわ』とおっしゃいました。 どの店に行っても、負けることはあります。でも負けたとしても、楽しく遊べるということは、勝ち負けだけではない魅力を感じて店に来てくださっている。お店のファンになってくださっているということなんだと思います。 このラッキーでも、そんなお客様がたくさん来ていただけるよう、今後もできるだけお客様に還元できて、新台も入れつつ、薄い利益で継続していく方向で進めています。初日にあれだけ並んでくださって、今でも多くの方が足を運んでくださっている。絶対にお客様の期待を裏切ることはできません」
10周年記念として開催された社員大会には、全社員が参加した。
社是・経営理念を浸透させたい
高山氏が大切にしているという「Let’s join us」という言葉を大前提に、2008年につくられた社是・経営理念。 社内へ浸透させるために行ってきた施策のひとつに、ジョイナス塾というものがある。 「社員たちには社是・経営理念が大切だという話をしてはいましたが、一体どれくらい社内に浸透しているのか、疑問を感じるようになりました。 そこで各店の管理者にヒアリングを行ったところ、『毎日朝礼で唱和はしているが、本当の意味や重要性までは理解していない可能性がある』とのことでした。 営業部長に相談すると、『社長が直接、ゆっくり時間をかけて話してもらうのが一番早いと思う』と言われました。 そこで、各店から1名ずつ無作為に人選して本社に呼び、話をするという機会を設けることにしました。その集まりを、ジョイナス塾と呼ぶようになりました」 ジョイナス塾では、社員6~7名に対し、高山氏が3、4時間をかけて、社是・経営理念に込めた想い、社員に対して求めることなど、様々な話をした。 その後は食事会を行った。そこでは仕事の話は一切せず、一人の人間としてどういう人になりたいのかなど、お互いの価値観を知る場にした。 「私も真剣に彼らと向き合い話をしましたが、彼らも真剣に私と向き合ってくれました。 日頃現場でどんなことを感じ、考えているのか。彼らの生の声を聞けたのはとてもいい機会でした。いいことも悪いことも様々でしたが、想像しているよりもずっと、真剣に仕事に向き合ってくれていることも知れました」みんなで決めたテーマ
社是・経営理念の浸透を目的としたジョイナス塾は、その後、メンバーを固定化したチームになっていった。 「社員と話を続けるうち、社是・経営理念が浸透してきているのを感じるようになりました。 そこで、せっかく集めるなら、何かに取り組ませてみようと思いました。 社是・経営理念を元に行動するということを身を持って経験させようと考えたんですね。 メンバーも毎回変えるのではなく、固定化し、集中して取り組むことができるようにしようと思いました」 そうして各店から1名ずつ選ばれたのは、一般スタッフから、副主任、リーダーなど役職はさまざまながら、「店舗によい影響を与えてくれそうな人物」だった。 彼らが、メンバーを固定化して始動したジョイナス塾の1期生となった。 1期生のテーマは「新規会員獲得」。 なぜこれをテーマとしたのか。その理由を高山氏はこう語る。 「営業(稼働)につながること、目標を定め、成果を実感できるようなものがいいと考えていました。 ただ、私が決めるのではなく、1期生のみんなで決めていきたいと思いました。 そこで、ジョイナス塾1期生の最初の会議では、私や常務がヒントを出しながら、何をテーマにするかについての話し合いからスタートしました」 高山氏は会議の場で、一日の来店客数の多さに驚いたという話をしたという。 「こんなにたくさんお客様が来てくださっているなら、一人ひとりに声かけたらもっと稼働が上がるんちゃうの?そんな話をすると、みんな『確かにそうですね…』と納得してくれました」 高山氏の話を受けて、1期生たちは、「自分たちに何ができるか」を考えていった。 声をかけるにしても何かきっかけが欲しい。そして、成果が数字で表せるものがいい。 それなら新規会員獲得を目標にしてはどうか。 そんな話し合いが行われ、テーマは「新規会員獲得」となった。一人ひとりと個人面談、掲示板での交流…
新規会員獲得という目標に対して、どのように動いて行ったのか、1期生の一人はこう語る。 「会議で決まった目標新規会員獲得数は、毎月の新規会員数が、数十人の店舗に対して、200人など、当時はかなり高い数値でした。 店舗スタッフ全員でお客様に声をかけていかなければ達成は無理だと思い、なんとかみんなを巻き込もうと考えました。 そこで、まずは会議で話し合ったことを店舗に持ち帰り、上司に報告することから始まりました。 『もっと常連のお客様を増やしていきたい。再来店を促すために、まずは新規会員獲得を目標にすることになりました』そんな話をしました。 その後、社員だけでなくアルバイト全員とも個別に面談を行いました。 特にアルバイトスタッフに対しては、会員とは何かという説明も丁寧に行いました。これまでの仕事にプラスになるので、面倒だと思う人もいるかなと思いましたが、反応は悪くはなかったです。 みんなこれまで知らなかったこと、社員だけで共有していたことを教えてもらったことがうれしいと感じているようでした」
ジョイナス塾の会議後は毎回食事会を行っている。お互いが人としてどのような人物なのかを理解しあう場にもなっている。
新規会員数が驚異的に増加!
新規会員獲得を目標としたジョイナス塾1期生は、高山氏も驚く程の成果を見せた。 始まった当初は、1カ月に200人の新規会員を獲得することに必死だった店舗が、現在では毎月1,000名を目標にする程だという。 具体的にはどのようなことを行っていったのか。1期生の一人はこう語る。 「本当に様々なことを行いました。1期生だけで情報を共有する掲示板を作り、毎日その日の成果を報告しあいました。よかったことを共有したり、うまくいかなかったらアドバイスをもらったりしていました。 全員で声かけを徹底したことで、以前と比べて何十倍もお客様と接する機会は増えました。 自店だけでなく、会社全体の目標数字を休憩室に貼り出し、現在の達成率をわかりやすくしました。そうすることで、アルバイトスタッフたちの中でも、自店の達成はもちろんですが、他の店舗にも手伝いに行きたいと言ってくれる人も出てきました。 これまで何度も今月は目標達成が難しいんじゃないかと思うこともありました。タイミングは違えど、メンバーそれぞれ壁にぶつかったこともありました。そんなときは、お互い助け合いました。 社長や常務からも『やればできる!』と励まされ、なんとか達成させることができました。 これまで、未達成だった月はほとんどないくらいです」共に楽しいこと、苦しいことを経験し、成長した
ジョイナス塾が好調な要因は様々あるが、メンバーの構成もそのひとつであると、高山氏は語る。 「店舗の中では中間層にあたるメンバーを選出したこともよかったのかもしれません。 店長とも、他の社員やアルバイトスタッフともコミュニケーションを円滑に取ることができ、周りを巻き込んで動くことができました。 会議で決めたことは、自分の言葉で店長に伝えるように言っています。 私や常務から店長に伝えれば、動いてくれるとは思いますが、どこかやらされている感が出てしまうと思うんです。自分からやろうと思ってやらないと、いい結果には繋がりません」 現在では順調なジョイナス塾だが、最初から全て順調だったわけではない。 始まったばかりの頃は、メンバーの中でも積極性にばらつきがあったという。 「最初は私や常務が会議の議長は誰がやるか聞くと、はい!と手を挙げる人、黙っている人様々でした。 目標達成に関しても、最初の頃は達成できないこともありました。タイミングが合わず会議ができなかった月には、少しだれているような印象もありました。 『前までできていたのにできないわけない!』と一喝すると、次の月からは達成できるようになっていました。 そうして続けていくうち、いつの間にか自分たちで会議を仕切るようになり、議長や、書記といった役割分担を決め、課題を洗い出して解決策を考えていました。 目標達成が難しそうな店舗があると、全員で達成したいからと言って、率先してその店舗にヘルプに行き、最終的には達成させました。 回を重ねる毎に顔つきが変わっていく彼らをみていて、とても感心しました。 何よりも、楽しそうに取り組んでくれたことがよかったです。彼らが楽しそうだから、私や常務も毎回すごく楽しみでした」 このように、苦しいこと、楽しいことを共有することで、徐々にチームとしてのまとまりができていったという。 なぜここまでがんばることができたのか、これまでを1期生の一人はこう振り返る。 「経営理念にLet’s join usとありますが、みんなでひとつのものをつくっていくという雰囲気がある会社です。 ですから、会社というよりも家族のような存在。社長はみんなの母親のような存在です。会議では厳しいことも言われるのですが、いつも『期待しているから厳しくする』と言ってくださいます。 これだけ一致団結してがんばれているのは、社長の想いに応えたいというのが強いです。それは親孝行したいという気持ちに近いんじゃないかなと思います」
本社で行われる会議
会議後の懇親会
役職・社歴・年齢ばらばらのメンバー。最初のうちは意見を出すことを躊躇する社員もいたが、今では意見を出し合い議論しあえる「仲間」になっているという。