株式会社カツヨシ商事、琴亮吉社長 TOPから学ぶ前編
カツヨシ商事に入社するまでの経緯を教えてください。
リトルリーグに所属して野球に夢中だったので、将来の夢はプロ野球選手でした。しかし、高校1年の時に肘を痛めてしまって。そこから気持ちを切り替えて大学へ進学しました。
大学2年の時、父から会社の経営状態が良くないから店舗売却を考えていると説明されました。この時、会社に入ってもらえないかと話がありました。
その話をされた時はどのような気持ちでしたか?
大学を卒業したら、父の会社にすぐに入社するよりも、他社で経験を積んだ上で就職しようと考えていたのでそのことを正直に話しました。強くて厳格な父でしたので、店舗の状態が良くないことが分かりながら、それでも自分の理想を求めるのであれば、会社は継がなくていいという言葉もあり、「別の道を進む」か「会社を継ぐ」かの二択を迫れました。そこから私の考えは間違っているのかもしれないと考え直すようになって、最終的には大学を中退して1997年に入社しました。
入社した後、お父様から何か言葉をかけられましたか?
特になかったような気がします。ただ、こういう経緯があったので喜んでいてほしいですけどね笑。
琴亮吉/株式会社カツヨシ商事 代表取締役。1997年に大学を中退して父が運営する同社へ入社。2000年に常務取締役、2015年に代表取締役就任し、現在に至る。
入社後は現場スタッフとしてスタートしたそうですね。
そうですね。ホールスタッフとしてキャリアをスタートし、主任、店長とキャリアアップしました。当時7店舗を運営していましたが、3年間で全ての店舗で実務しました。その後、2000年に常務取締役となり、営業の全てを統括していました。
経営状況を回復できたのはなぜですか?
きっかけは、メルヘンワールド萩野町店のリニューアルです。当時は4号機の時代でしたが、吉宗、北斗の拳がヒットしていたので、思い切ってスロット専門店に大規模改修しました。これが当たって。この結果を受けて、追加で2店舗スロット専門店にしましたが、これもヒット。業績が回復したことで危機を脱することができました。
父からは、メルヘンワールド萩野町店のリニューアルが失敗したら会社は継続できないとプレッシャーをかけられ、覚悟を持ってやれと釘を刺されていたので、軌道に乗った時は心底安心しましたね。
父と息子という関係は、仕事する上でやりにくかったりしますか?
私はやり辛さを感じたことはありませんし、それは父も一緒だと思います。しかし、周りはすごく気を遣ったと思いますよ。当事者だと気付けないことも多いですから。
例えば、社内で息子が社長に対してタメ口になってしまうとか。親子ですから自然なことなんですけどね、会社では立場に上下がありますから
なるほど。周りの目もあるということですね。
そうです。だから、しっかりとしている家族を見ると教育が出来ているなと感じますし、そういう会社の方が業績が良いように感じます。
これは世間を知らないからこそ起こり得るので、跡を継ぐにしても、他の会社で経験を積んで入社する方が良いですね。
話は変わりますが、入社して一番苦労したことなんですか?
人ですね。業績が良かった時代は店長が仕事をしていなくても数字は伸びていました。出勤は2時間だけであとは遊んでいるような実態もあって、これでは若い社員が育たないし、不正行為などにも繋がる恐れがあると考えて、役職者の入れ替えを提案しました。
父は業績が良いのだから構わないというスタンスでしたが、理解してもらえるまで提案をしました。半年で役職者を大幅に入れ替えました。
それは大変でしたね。
そうですね。その甲斐もあって、お店の雰囲気は変わり、若い社員が主体性を持ったように感じました。
一方で、進め方には問題があったと思っています。手荒く、口荒く社員を扱ってしまい、一方的に怒鳴る日々でした。その結果、自分が信頼していた人材が続けて辞めて行きました。
なるほど。
最初は自分でも気付いていなかったんです。ただ、ふとした時に思いました。大切な仲間が辞めて行くのは、自分のせいじゃないかって。
そう思ってから、答えを求めてリーダーシップやマネージメントの本を読んだり、成功している経営者の方の話も聞き、それで確信しました。やっぱり自分に原因があったんだって。これがきっかけで、部下への接し方も大きく変わりました。
どのように接し方を変えたのですか?
普通のことではあるんですけど、社員の話に傾聴することですね。他には、理由を聞かないで怒ることを辞めるとか。
その結果はいかがでしたか?
職場の雰囲気が良くなったし、業績がさらに伸びました。常務が180度変わったという声が現場から挙がっているという話が私の耳に入るくらいですから笑。
目線を合わせるということもあるんですか?
あるかもしれませんが、それよりも現場の意見をしっかりと経営に反映させていくということだと思います。
当社の指示系統は、どちらかというとトップダウン色が強いですから。トップダウンが強すぎると指示を待つ人ばかりになってしまうし、組織は育たないですから。バランスが大事なんでしょうね。
後編に続く