「適正な人件費」を算出するには 後編

前編では、人件費を分析するひとつの指標として、労働分配率と労働生産性についてお伝えしました。
後編では、I社の事例を踏まえてご紹介します。

I社(関東、15店舗)の事例

I社では7年前から新卒採用を開始していますが、適正な採用人数を算出するために、労働分配率を指標とした人件費分析を行うようになりました。

労働分配率とは、会社の利益(付加価値)のうちの、人件費(従業員)の比率です。

労働分配率を算出する際に必要な売上総利益は、同じ会社の店舗でも異なります。
方針上、高利益率の店舗もあれば低利益率の店舗もありますし、その時々の経営・営業状況なども変わっていくので、それらを踏まえて、適正値の分析をしなければなりません。

また、労働分配率は適正な水準が決まっていないため、他社との比較だけでなく、自社の過去のデータとも比較をする必要があります。

I社では、単純に店舗規模に応じた人員配置を行うのは適切でないという判断をしました。
そこで、過去5年に遡って数値を分析し、その当時店舗ではどのような施策を行ったのか?どのような時代背景や会社の事情があったのか?を検証していきました。

この検証を繰り返すことで、I社にとってより適正な人数、適正な処遇を算出しています。
現在では年度計画の中で人件費に対する方針を明確にし、労働分配率を目標としています。さらに、毎月、管理会計上で各店の労働分配率の達成状況が分かる仕組みにしています。

【参考】
KPI(Key Performance Indicator)
業績管理評価のための重要な指標
組織の目標を達成するための重要な業績評価の指標、達成状況を定期的に管理することで、目標達成に向けた組織のパフォーマンスの動向を把握できる。
KPIを元に、昇格・昇給の運用見直し、部門の統合、ルーティン作業の見直し、不必要業務の廃止などを行う。

また、近年では多くの企業で人件費の削減が行われています。
人件費を削減すること自体は悪いことではありませんが、根拠のある数値を算出した上で、行う必要があります。

なぜなら大した根拠もないままに削減を行ってしまうことで、労働環境の悪化による従業員のモチベーション低下から、お客様数の減少といった機会損失につながりかねないからです。
限られた原資の中で、どのような人事戦略を行うのか。
固定費的な要素である、給与を上げるのか、年俸制にするのか、退職金制度の見直しを行うのか、業務をアウトソーシングするのかなど、
もしくは変動費的な要素を持つ、業績型賞与の導入をするのか、アルバイト化(正社員の比率を下げる)するのか。
それぞれの企業に合った、施策を行い、従業員のモチベーションを上げ、業績向上につなげていくことが重要です。

広告規制が厳しくなり、簡単に売上を伸ばすことができない今、企業には「人的な力」による業績向上が必要です。
人的な力を高めるためにも、人事戦略は重要であり、その戦略を立てる上で、人件費の分析を行うことはもはや必須となっています。
根拠ある数値を設定することで、従業員の納得も得られます。
今後を生き残っていくためには、「全員野球」で目標達成に向かえる組織づくりが必要なのではないでしょうか。

―以上、「「適正な人件費」を算出するには」でした!

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