東和産業株式会社、岸野誠人社長 TOPから学ぶ
関東首都圏でUNOを運営する東和産業株式会社の岸野誠人社長のインタビューです。入社までの経緯、経営者である父の教え、新卒採用で早期離職を防ぐための工夫、今後のビジョンなど幅広くお話を伺いました。
まずはこれまでのご経歴を伺いたいと思います。
学生時代からいずれは自社へ就職すると決めていましたが、それまでに様々な経験をしたいと考え、大学卒業後はアメリカに留学しました。
周りに留学する友人がたくさんいたこともあって影響を受けたんだと思います。彼らが帰国する度にたくましくなっていく姿を見たら、自分も留学したいと思うようになりました。
実際にご自身が留学してみていかがでしたか?
最初はやはり苦労はしました。
英語をほとんど話せない状態で留学したので、まずは言葉の壁がありましたね。ニューヨークの大学でMBA(経営管理学修士)取得に向けて勉強していたので、語学とビジネスの両方を日々猛勉強していました。私の人生の中で一番勉強した期間だったと思います。
アメリカにはどのくらいいらしたのでしょうか?
最初は1年で帰ってくるつもりでしたが、結果的には約5年間滞在しました。その間にMBAを取得し、大学卒業後は電通アメリカに就職して約2年間働きました。
日本に戻られてからは、どのような経緯で御社への入社に至ったのでしょうか?
帰国したのは2005年でしたが、その頃には2007年には自社に入社するということがだいたい決まっていました。そこで残り2年間は他社で業界のことを勉強しようと考え、サミー株式会社に入社し営業企画の仕事をさせて頂きました。
その後2007年に30年来のプロジェクトである有楽町駅前再開発に伴う「有楽町UNO」がオープンするタイミングで企画部次長として入社しました。
入社に際して、お父様から経営者としての教えのようなものはありましたか?
「1年間は会社のいいところだけを見なさい」と教えられました。
それまで父を含め多くの経営者・会社を見てきました。人の心理として、どうしても他と比べて、悪い面を見てしまいがちです。特に今まで自分がいた環境との違いには目がつきやすいです。ですがそれは一旦置いておいて、まずはいい面を見る力をつけるように、と父は言いました。
なぜかというと、今まで自分が見てきたものと違うことを指摘するのは、簡単なことなんです。それは自分の経験との違いを探しているだけで、必ずしも物事の本質が捉えられているということにはなりません。今でもなにか気になることがあったときには、必ずいい面も見てから考えるようにしています。
入社当初、御社のどのようなところがいいと思われましたか?
社員・アルバイト共に、教育についての考え方や方法、ルールなどの共有がしっかりと行われていて、とても整っていることに驚いたのを憶えています。
柔らかい商売だからこそ、硬くやる。「パチンコ屋さんだから」と言われるのではなく、「パチンコ屋さんなのに」と言っていただけるようにしたいという想いが社風として定着していました。
御社ではフード事業も行われていますが、レジャーとフードでは、どのような部分に違いを感じられますか?
一言で言えば、動くお金の桁が違うということです。
パチンコホールは、飲食店に比べ、1日で動くお金の額が大きいです。パチンコホール一店舗分の利益は、フード事業の120店舗分にも及びます。機械台など設備にかける額も大きく、経営をするにあたってもある意味勢いやパワーが必要になります。一方でフード事業はその逆で、きめ細やかさが必要になります。特にコスト面での意識が全然違います。
レジャー事業とフード事業の経営陣同士で、経営のノウハウの共有をしているのですが、やはりその部分が大きく違うなと感じます。それぞれの成功事例などを共有していますが、そのまま適用するのではなく、それぞれに適した形に変えていかなければいけません。その両方の異なるバランスをどう掛けあわせるのが一番効果的か、日々試行錯誤しています。
新卒採用について伺いたいと思います。御社では、いつ頃から定期採用を始められたのですか?
学卒の採用を始めたのは、今から20年以上前になります。現在その一期生が当社の役員をしています。
それはすばらしいですね。御社の新卒定着率はかなり高いと伺ったのですが、どのように工夫されているのでしょうか?
毎年の結果を踏まえて、採用・育成計画の見直しをしっかり行っています。基本的なことですが、ここはやはりとても重要です。
もちろん毎年採用が成功するわけではなく、一昨年は1年間で新入社員の2割が辞め、これまでで最多の退職者数になってしまいました。そのため、採用の基準と内定後・入社後のフォローを見直しました。その結果、昨年入社の新入社員は1年間で一人も辞めず、これまでで一番よい結果を残すことができました。
一昨年から昨年にかけては、どのような変更をされたのですか?
まずは採用基準を少し引き締めたことです。採用基準を下げて採れたとしても、長く続かないということがあったからです。それからなるべく身近な上司がきちんとフォローできるよう、社内でも意識の共有を行いました。
それと、これは昔からの取り組みですが、当社は新入社員の横のつながりが強いです。入社後は1ヶ月の研修を経て、バラバラの店舗に配属されます。関東で店舗展開しているので、会おうと思えばいつでも会える距離ではありますが、それでも実際に勤務していると中々集まる機会はありません。そのため、研修やクラブ活動を通して、全員が集まる機会を多くつくるようにして、3ヶ月に1回は顔を合わせられるようにしています。
今はSNSの発達でいつでも気軽に連絡を取り合うことができますが、それでも共に入社した仲間たちとのつながりがなるべく強くある方が、特に新入社員にとっては、モチベーションアップにつながると考えています。
選考活動において特に気をつけていることなどはございますか?
最近ではインターン制度を導入しています。実際に働いてもらうことで、学生側も働くイメージがつきやすいですし、会社側としても学生の素の姿が見えやすいので選考の参考になります。
それからできるだけ内定は早めに出しています。長引かせると、いい学生程離脱していってしまいます。昨年までは人によっては選考が長引いてしまうことがあったので、今は面接3回できっちり終了させるようにしています。
面接で何か工夫されていることはありますか?
面接では特別なことはしていません。質問する内容も定番のものです。やはり大切なのは採用後どう育てていくかだと思います。ですが、会社との相性などは育成でどうにかなるものではないので、そういった部分はよく見るようにしています。
今後のビジョンを伺えますか?
現在のパチンコ業界は、業績に限らず、業界全体が縮小傾向にあります。その事実をいかに越えるべきハードルとして乗り切っていくかだと思います。
当社では、経営理念の実践を通して、より企業としての団結力を高めることで、ハードルに立ち向かっています。日常的な業務に対しても、理念としっかり照らしあわせて、意識の共有をしていきたいと思っています。
そしてもうひとつ、社員に対して「小さなイノベーションを起こす」ことを呼びかけています。パチンコ業界は、何十年もの歴史を持つ業界です。パチンコホールを経営する上で、すでに「新しいこと」というものは少なく、全てのホールがほとんど横並びにいる状態です。その中でいかに個性を出すか、生き残っていくかということは、「人」にかかっています。
消費税の増税もありましたし、今後は風営法の改正もあるかもしれません。業界そのもののルールや環境が変わっていくことに、対応していけるような集団でなければいけない。
ですから、小さなことからでも、現在の環境・時勢・トレンドに合わせて変えていくということを大切にしています。 店舗展開や業績アップなど、そういった数字での目標もありますが、まずは目に見えたハードル・課題があるのですから、会社全体の体質を変えていくことを一番の目標にしています。
最後に、業界の方へのメッセージをよろしくお願いいたします。
業界が縮小傾向にある今こそ、お客様の立場になって、私たちの仕事や役割を見直すときだと思っています。業界の縮小によって一番苦しんでいるのは、遊技するお客様です。少しのお小遣いで遊べる「身近な娯楽」だった時代から、たくさんのお金を必要とする「敷居の高い娯楽」になってしまったパチンコ・パチスロ。
加えて業界における消費税の対策次第では、お客様の遊技環境はさらに変化します。そういった中で、お客様に楽しんでいただける遊技であり続けること。そのためには、私たち自身が業界を、お客様の楽しみを担っていることをしっかり自覚し、自分たちになにができるのかを考え、共にイノベーションを起こしていきましょう!
ありがとうございました!