■■■■■

TOPから学ぶvol.55
オザキエンタープライズ株式会社 尾崎真澄副社長 前編


***

プロフィール
尾崎 真澄さん
オザキエンタープライズ株式会社 取締役副社長
武蔵野女子短期大学卒業。
社内で主に社員教育、採用担当を務める傍ら、自宅に「ともだち文庫」を開き、絵本や詩の朗読などを通したふれあい活動を行う。
ベンチャー企業における人権啓発活動への貢献が評価され、2003年にはジュネーブで国連人権小委員会メンバーへの講演会を行うなど、「命への感謝」「愛」を大切にするメッセージを広く発信している。

***


―今日は、業界内外から大きな注目を集めている貴社の社員教育や人を大事にする経営について様々なお話をうかがいたいと思います。

弊社もかつては、スタッフが入れ替わり立ち替わりといった時期がありました。14年前に初めて人事異動をした翌日は約半分の30人が退職したなんて事も…。しかし、ここ5年では離職率が18.5%、3年で11.1%、1年では3.7%です。(社員約70名)そういう意味では、先輩が後輩を教育するというコミュニケーションは以前に比べて格段に良くなっているんじゃないかな、と感じています。

―それは「いつ」「どのように」変わっていったのでしょうか。

29年前、現社長と結婚して入社した時に抱いた「社内を変えなければならない」という思いは、会社を運営する者としての夫婦二人の共通認識でした。当時はキャスト同士の挨拶ですらおざなりになっている状態で、組織としては不完全なものでした。コミュニケーションを図る意識が希薄だったり、社内に教育の仕組みができていなかったというのが原因なのですが、「まずは、そこから変えていこう」と。
ミーティングなどを通して挨拶といった基本から徹底するようにして、さらには、QC(Quality Control)を取り入れて、商品・サービスの品質向上を図る中で仕事の過程を深く理解するようになり、それが営業活動や教育にもつながっていくという好循環が生まれました。

1994年は社名を「オザキエンタープライズ株式会社」に変更して再スタートを切った年なのですが、この時にCI(Corporate Identity)活動を始めて、弊社にとっては経営理念を象徴するバイブルとして「いのちの木」という絵本を作ったのです。この絵本はリンゴの木の一生を描いていて、現代を生きる人達へのメッセージとして「先人への敬意と感謝」「未来への夢と希望」が込められているのです。
また、リンゴは弊社のイメージキャラクターなのですが、縦に切ると真ん中にハートの形が現れ、横に切ると真ん中には星の形が現れます。これは、「人は誰もが温かいハートと美しい輝きを持っている」というオザキエンタープライズの考え方を象徴するものでもあります。

そうしたCI活動を始めた直後に私は癌を患いまして、「この先、どれほど生きられるんだろうか」と思い悩んだり、2回の手術後は体調が芳しくなく、子どもたちを抱きしめながら「お母さん…生きているだけでもいい…?」と言った事もあったぐらいです。図らずも、「いのちの木」に導かれたかのように命の尊さや過去と未来について考えさせられましたね。

1999年、男女雇用機会均等法が改正された当時には「愛する人へ。」という人権啓発冊子を作りました。(2001年1月1日発行)これは、お互いに尊重し合う社会の実現に向けて取り組む心を養うための、社内の人権研修のテキストとして使っています。
人権と言うと、人によっては違った方向に捉えることもありますが、弊社にとって一番大切なことは「愛する人へ。」の中に書かれている「あなたがいるから私がいます」という言葉です。人は一人で生きているのではなく、生かされている。そのことを知れば、自然と周りの人への感謝の気持ちが生まれ、自分がいる社会に心地良さを保とうとするようになるはずですよね。
年間3万人を超える自殺者がいて、ともすれば事なかれ主義がはびこり、隣人とのコミュニケーションすら希薄になる現代社会において、弊社は「癒しの経営」を目指そうとしたのです。

―そういう考えに至った原点はどこにあるのでしょうか。

慈愛と感謝でしょうか。最近、キャストは昼食にコンビニのおにぎりなどを食べて済ますことが多く、それはとても無機質なものに感じていました。そこで、自宅でご飯を炊いてキャスト一人ひとりの顔を思い浮かべ、「ありがとう」を心で念じながらおにぎりを作り、「今日はこの店舗、明日は違う店舗……」といった感じでキャストに配ったんです。おにぎりを食べるとお父さんやお母さんを思い出す人が多く、心が温まるんですよね。それによって会社とキャスト、またはキャスト同士に血の通った温もりが生まれたというか、それが弊社の教育のベースと言えるかもしれません。

おにぎりから両親を連想して、両親を大切に思うことにつながる。会社やキャストにとって大事な存在であるお客様は、ある意味では自分たちの両親と同じような存在とも言えます。そして、キャストにとって会社は、これまた両親のような存在であると言うことができますよね。
両親を大切に思うから、両親から大きな愛を受けることができる。それはキャストとお客様の関係においても、キャストと会社の関係においても一緒だと思うんです。

両親や祖父母、兄弟や友達など、その中の誰か一人が欠けただけでも、今のあなたや私たちは存在しなかったかもしれない。だから、「愛する人へ。」の中にはこんな言葉が書かれています。
「みんなに感謝します。人生のすべての出会いに、感謝の気持ちを伝えます」
この気持ちを
社内に浸透させ、そして、このメッセージを世界中に広げていくのが弊社の使命でもあるんじゃないかとさえ思うんです。

―そうした心の教育に加えて、社内の人権啓発標語やポスターなどのコンテストによってさらに意識を深めることができているようですね。

弊社では10年に亘って、毎年、人権啓発の作文・標語・ポスターの社内コンテストをしています。また、ありがとうの気持ちの浸透や、社内での意識の共有を図るための「私たちの共有ビジョン」「七つの価値観」というものも毎日唱和をしていて、それを長い間続けてくると、もはや特効薬ではなくて漢方薬のようにものになっているんですね。一時的に変化を起こすためのものではなく、隅々まで浸透して体質改善を図るようなもの……。元々はコミュニケーションを高めるため、人と人との良い関係性を作っていくためのツールとしてとらえていたのですが、大袈裟に言えば、今や空気のように、ごく自然にそこにあるものと言うことができるかもしれませんね。

―続きは後編で!

関連記事