パックエックス通信

富國物産株式会社、薛博夫常務取締役 TOPから学ぶ

薛博夫/富國物産株式会社 常務取締役。一般社団法人 日本遊技産業経営者同友会 副代表理事も務める。機械商社の営業を経て富國物産株式会社へ入社。現場を経験し、その後、常務取締役へ就任。同友会の副代表理事も兼務され、業界の成長発展に尽力されています。

今週は埼玉県内に4店舗を運営されている富國物産株式会社の薛常務です。パチンコ事業を立ち上げたきっかけ、苦悩、理念やビジョンに対する考えをお伺いしました。

薛常務、本日は宜しくお願いします。早速ですが、まずはパチンコ事業を始めるきっかけをお伺いできますでしょうか。

パチンコ事業を始める前は貿易と不動産の会社でしたが、世代交代があり、新たな事業を行おうという転換期があったんです。当時の専務(現社長)も色々考えたようで、アメリカまで行って患者さんをお客さんとして扱うような病院を見て、医療関連をやろうと思ったり、知り合いのパチンコ店を見学させてもらったり、色んな選択肢の中から、たまたまパチンコ店経営を選んだようです。

薛常務はパチンコ店の立ち上げ前から会社にいらっしゃったんですか?

その時は、自動車メーカーに機械を降ろしている商社で営業をしていましたが、お店を創るから戻ってこないかと声をかけられました。

そうだったんですね。戻ると決めてからはどのようなことをされたんですか?

開店の直前だったので、1週間釘の学校に通った後、いきなり社員の採用面接。私も素人でしたが、全員素人で新しい店を創ろうと決めていましたので、主婦を中心に未経験者を採用しました。面接などしたことがなかったので、誰を採用すればいいのかもわからなかったですけどね(笑)。

採用後は社員研修をしなければなりませんが…当時は研修をしてくれる会社もなく、僕自身もパチンコ未経験で教えられる状況ではありませんでした。それでも、研修プログラムを自前で作り、公民館で勢いだけの挨拶の練習などを行いました(笑)。居酒屋さんでの入社式も印象的でした。ま、ドタバタですね。

やはりその当時が一番大変な時期でしたか?

振り返るといつでも、「今」が一番大変な気がします。今生き残るにはどうすればよいか、と。確かにお店をオープンして一年間の記憶は強烈に残っていますが、それも楽しい思い出で、結局いつでも一番大変なのは今現在のような気がします。

なるほど。確かにそうかもしれませんね。では質問を変えさせて頂きますが、現在会社または経営者として、特にどういったところを大事にしていらっしゃいますでしょうか?

我々がパチンコに進出した時は基本的には素人でした。素人なら素人なりにサービス業、レジャー業としてやっていこうという風に考えていましたので、パチンコの常識にとらわれず、他業種にも学ぼうと考えました。

社員には一流のビジネスマンになれと言っています。当社には、紙に書いた「社訓」や「理念」はありません。そういうものがあると読み上げてしまい身につかないと社長が言っています。

先日の社員研修でも、我社の良いところは何か?を、社長が社員一人一人に聞いていました。「嘘をつかない営業」「ロボットになるな」だとか、いろんな合言葉が社員の口から出ていました。<実務の中から理解して、合言葉という形で、会社の理念が共有されていると思います。

文字で理念を掲げないという方針は珍しいですね。以前、理念カードを持たせることが流行りましたが、その際もカードを作ろうといった動きはなかったのでしょうか。

ないですね。その分どう社員に伝えていくかというのが難しいですけどね。ですから日々の仕事の中で店長がみんなに話をするとか、先輩が後輩に伝えるということを行っています。

会議は長時間で、一つの事例をああでもないこうでもないと延々と議論する感じです。「手作りの営業」という合言葉もあり、トップダウンではなくてみんなで仕事のやり方を考える会社です。なので一番発言権がないのが社長なんですね(笑)。

そのようなお考えがあったんですね。御社は離職率が非常に低いとお聞きしたのですが、なにか秘訣はあるんですか?

最初の10年くらいは特に離職率が低かったですね。他の社長さんたちと話した時に、辞めた人間の名前を言っていたのですが、皆さんからは「辞めた人間の名前は全部覚えてないよ」と言われました。

ここ10年くらいは正社員から契約社員まで幅広く採用していますので、すべてを把握できませんが、確かに弊社は離職率は低いと思います。正社員だと50人社員がいて、ここ1年で辞めたのは1人かな。その1人は農業をやると言って、社員総会の檀上でみんなに胴上げされていました。出戻り率も高いですよ(笑)。ただ、うちはマニュアルなどがないので即戦力になる人間をすぐに作れないですね。新入社員が即上手な接客が出来る店も多くなりましたが、弊社はうまくできません。それでも2~3年いると最初は笑顔が出せなかった子でも自然と笑顔が出るようになります。先輩やお客様が社員を育ててくれているんだと思います。どうも形から入らないので時間がかかります。何事も本当にゆっくり進む会社です(笑)。

今後、何年以内に何店舗という目標はございますか。

全くないですね。ただし社員のモチベーションとしてそのような目標を期待する声はあります。30年前に100店舗目指そうとは言ったんですけどね。でも建物より人を創ろう!と考え直しました。

今は当社しかできない新たなタイプのパチンコ店を創るといったビジネスモデルを掲げていますが、まだ実現はされていないですね。

社員の目標は「一流のビジネスマンになる」でいいと思っています。うちを辞めても社会で活躍する人間に成長してほしいです。

社員さんに成長してもらうために、どういった取り組みをされているのですか。

春と秋に会議形式の研修会を行っています。社長と直に討論するような場です。その時に社長文庫とでも言いましょうか、本をたくさん展示していて、読みたい人は好きな本を持ち帰ることができます。

また、この本の感想文を出せば社長賞を出すと言っています。で、毎回どんな本を持っていって、どんな本が売れ残るか、興味を持ってみていますが…今回、原発の本が売れ残ったのを見て、社長が怒っていました。小さな子供のいる社員に「原発が心配なら読んで知識をつけなさい」とアドバイスをしていました。心配でないなら読まなくてもいいと。なるほどと思いました。

社長も私も子供がいませんので、「あなた達が将来会社を引き継ぐんだよ」と伝えています。

なるほど。では、質問は変わりますが、現在に至るまでのターニングポイントはどこだったのでしょうか。

1つ目は1号店初期のドタバタ営業とトラブルを解決し、素人営業をやり通すとお店の方向性を決めたときですかね。また、最初は全員正社員として採用していましたが、あるとき正社員、契約社員、と分けて採用をしまして、ここが二つ目のターニングポイントですね。

最初の頃のイメージだとアルバイトは学生さんというのがあって、若い人に働く場所を与えることは悪いことではないと思っていたのですが、今はフリーターとして延々とアルバイトが続いていくこともままあるので、ここは問題かなと思っています。雇用形態を変えた事は会社としてよかったのか、いまだに考える点です。

効率を考えないですんでいた時代は、場内で綱引き大会をやったりしていました(笑)。新台が何ボックスか入った時に、チームを分けて勝ったお客さんが新台に座れるんです。お客様も全力で挑むので勝って座った人も、手が震えちゃってハンドルが定まらないんですよ(笑)。そんなイベントを当時は色々やっていました。そんな風潮も合理化の波におされ徐々に抑えられていきましたけどね。

今のお話ですが、契約社員を取り入れることでお客様との関係が希薄になったりしませんでしたか。

なったと思います。そこをどう解消するかを悩んでいたのですが、契約社員も継続年数が増えていくと職場でリーダーのような働きをするようになるんですよね。

新入社員が入った時も一生懸命面倒を見てくれて、時間をかければ人は変わるんだなと実感しました。お客様との関係と言う面では、正社員、契約社員、と言う区別は、既になくなっています。

常務をはじめとした皆さんの一生懸命さが伝わったんですね。色々試行錯誤して教育に取り組まれていますが、常務自身も社員の方と接する機会は多いですか?

私の場合ちょっと特殊だと思うのですが、一緒に店内のペンキ塗りをするなど、共同作業をすることもままあります。現場をわかってないとよく言われますけど、この壁のペンキ塗ったのは僕だぞと言い返します(笑)。

ペンキ塗りまで一緒にするというのは初めて聞きました(笑)。では、競合店に対するお考えもお伺いしたいのですが、いかがでしょうか。

他店はほとんど意識しません。頭取りなんかするなと言っています。反対に他店の頭取りの子に「そっちはどう?」って聞けばいいんじゃないかな(笑)。でもそうは言いつつ、現場は週一程度は頭取りしていますけどね。

そうなんですね(笑)。常務の口ぐせや座右の銘は何かありますか。

口癖は「節電!」「節電の薛(せつ)です」って(笑)!座右の銘は「得手に帆をあげて」…自分の得意な事を伸ばそう(得意の帆に、風をたっぷりとらえて進もう)という意味です。本田宗一郎さんが好きで、本田さんの著書の題名でも有ります。

本田宗一郎さんのどこがお好きなんですか。

僕は機械工学科卒ですが、宗一郎さんは大学を出てらっしゃらないんですよね。でも、エンジン作りで壁にぶつかり、解決するために大学の授業に潜り込んでただで授業を受けてたんだそうです。このファイトに頭が下がります。

マン島レースの見学後、外国のマシーンの部品を買い取って日本に持ち帰り研究しようとしたけれど、荷物の重量オーバーで、飛行機に乗せてもらえなかったそうです。隣の列にいた太った乗客をみて、不公平じゃないかと、それなら自分の身体にチェーンを巻きつけてから服を着て…、そうやって努力しながらオートバイを作っていくというバイタリティがすごいなと思っています。自分のやりたいことを貫く姿勢が好きです。

なるほど。ありがとうございます。では最後に読者の方にメッセージをお願い致します。

ホール5団体会議小委員会環境実務者会議(エコホール宣言)の座長をさせて頂いています。同友会や日遊協の環境活動にもかかわっていて、最近、企業の社会的責任を考える機会多くなっています。

社内でも風営法の勉強会の素人講師になって法令順守の話を社員にしたりしています。広告規制、総付景品、貯玉、再プレイ…そこで考えるのですが、ルールや法律を守るのは当然。ですがその中で自分たちは何をすべきなのか?を考えることがもっと大事だと思います。

警察がこう言ってきたとか、そういうことじゃないと思うんですよね。例えば、通りがかった親子連れのお子さんが、トイレに行きたい…入場お断りだけど、トイレを使わせてあげるのが人間的ではないか?などと、現場と議論する事もあります。

誤解を恐れずに言うと、昔の様にお父さんのひざに座って子供がパチンコをするっていう光景が僕は大好きです。これだけ射幸性が上がると無理な話だとも思います。家族公認の(業界的に言うと国民公認の)パチンコ店でありたいと思います。難しミッションですが、そうあってほしいと思います。

どんなものに対しても本質がなんなのか考えるということが大事ですね。本日は貴重なお話ありがとうございました!

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