パックエックス通信

株式会社佐藤商会、黒岩禅執行役員 TOPから学ぶ

黒岩禅/株式会社佐藤商会 執行役員でTSUTAYA事業部マネジャーでもある。音楽・映像ソフトのレンタル店として日本最大手のTSUTAYAチェーン。佐藤商会様はTSUTAYAのフランチャイズ店舗経営を事業の1つとして展開しています。この部門の責任者でもあります。1999年に現在の佐藤商会へ転職し、年間3,000万円の赤字であった調布国領店を半年で黒字化。近年はセミナー講師としても活躍の場を広げている。2010年開催の『TSUTAYAビジネスカレッジ第1回講師オーディション』ではグランプリを受賞

今週は人気コンテンツ『TOPから学ぶ』の異業種編第1弾として、株式会社佐藤商会 黒岩禅執行役員(TSUTAYA事業部マネジャー)にお話を聞かせていただきました。黒岩さんと言えば「最高のチームをつくるシンプルな仕掛け」という書籍が有名です。黒岩さんが今までの経験を活かして運用している2つの仕掛けやトップとしての考え方やご自身が「北風のマネジメント」から「太陽のマネジメント」へと転換されたきっかけなどを中心に、お話を伺いしました。

黒岩さん、本日はパック・エックス通信初の異業種インタビューです。初めての試みですが色々と教えて下さい。まず、現在のお仕事内容を教えて下さい。

今の仕事は主に2つです。

1つ目は佐藤商会が経営するTSUTAYA5店舗を統括して、営業サポートを行っています。戦略・戦術の部分でぶれていないか、間違った方向に進んでいないかどうか、それらを実行するための価値観を全体調和ですり合わせていくという業務を行っています。現場には頼れる部下達がいますので出来る限り任せるように心掛けています。

2つ目はセミナーや講演活動を行っています。今は業務の2割程度を占めていますが、お陰様でお客様からたくさんのお引き合いを頂くようになりましたので、来年度はこういった活動がもっと増えると思います。パチンコ企業様からの依頼もよく頂くんですよ!

そうなんですね!TSUTAYAさんのお仕事で、「価値観を全体調和で合わせていく」という業務は、実際どのように実行されるのでしょうか?

やり方は様々ですが、私が行っている手法の1つにオリエンテーションという方法があります。内容は1ヶ月に1回、私が各店を周り、社員さん、アルバイトさんの質問に片っ端から答えていくという方法です。

彼らの抱えている疑問を解消することを通して、うちの会社はこういう価値観で仕事をしているんだよ、だからこうして行こうね、というすり合わせを行っています。

2004年から行っているので7年間、回数で言うと88回開催しています。全部で1,281人からの質問に答えているのですが、私自身もすごく勉強になっています。会社に対して、仕事に対して、上司に対して、そんなことを思っていたのか!指示したことが、少しずつズレて伝わっているな。など、毎回気付きをもらえます。その度に、私達の価値観、大切にしていることを相手に伝わるように話しています。

その様な手法は初めて聞きました!実際にどの様な質問が投げかけられるのですか?

1日で全店周りますので、最後の店舗は飲み会形式で行います。飲み会形式の時の質問はディープですよ~(笑)

例えば、彼女はどうすればできるんですか?とか彼氏と3年付き合っていて結婚も考えています。でも、他にも好きな人が出来ました。今の彼氏とは別れたくないんですがどうすればいいですか?とか(笑)

すごい質問ですね(笑) その質問にはどう答えるんですか?

彼女はどうすればできるんですか?という質問に関しては、彼女を作る事は簡単だよ。と答えました。だって、いいなぁと思った女性に「僕と付き合って下さい、僕と付き合って下さい」とアクションし続ければ、そりゃ50人60人に1人は脈有な人が見つかりそうでしょ(笑)

ただ、自分に好きな子がいて、その子と付き合うことは難しい。でも、例えば2人で食事が出来るくらいまで頑張って、その時に「○○さんの事、すごい気になっているんだけど、考えといてくれない?」と言って、1ヶ月後に告白したりすると付き合える確率って上がると思うんですよね。そういう努力してる?と聞くと、やっていません…と答えます。

要は、君のモテる男像って女の子が寄ってきて告白されると思ってるだろ?世の中の女の子に聞いてみなさい。20歳過ぎたら自分から告白する女の子は10人に1人もいないよ。え~そうなんですか~!?という悩める本人と、隣でウンウンと頷く女の子たち(笑)

今まで彼女が何人もいた経験がある人達は、それだけ振られた経験があるんだよ。君は振られた事は何回あるんだい?1回もありません…それは仕事に置き換えると、仕事が出来る人は、それだけ失敗も多い、ということなんだよ。だから、失敗を恐れずにチャレンジしなさい。って説明すると、そうかぁ!となるんです(笑)

相手の質問を通して価値観を合わせていくのでわかりやすい、入ってきやすいのではないかと思います。

自分の体験を仕事に置き換えて話してもらえると、確かにすごく納得がいくし、やってみよう、という気持ちになりますね。

1,281人からの質問に答えてきた黒岩さんはどんな質問にも対応できそうですね。たまに、何で黒岩さんはどんな質問でも答えられるんですか?という質問をされる事がありますが、最初はそんなことありませんでしたよ。こんな風に言えばよかったな、なんて反省することもありました。

根底に、皆が気持ちよく働ける環境にしたい、会社としての価値観を伝えたい、という基本的な考え方があって、沢山の質問に答えることで、その伝え方、対応力が身についた、ということでしょうね。仕事も同じですよね。まずは基本、それから応用。

基本的な事をしっかりとやり続けると、その応用はいくらでも出来るようになります。あの人はなんでも出来るって人ほど、一見地味で基本的な仕事を一所懸命やっているんだよと説明します。だからまずは店長に言われたことを徹底してやりなさいと教えます。

アルバイトさん含む現場スタッフの方へのマネジメントも重要ですね。

オリエンテーションを始めた時は、目上の人や上司への批判がすごく多かったです。勘違いしているんです。上司は仕事が出来る人っていうのは幻想です。うちの店長たちは初めから素晴らしく優秀な人たちというわけではありません。

うちのチームは仕事が出来る人間はいないけど、目的や夢に対して一所懸命な人間が集まって仕事をしています。だから、アルバイトさんも一所懸命やってくれることが大きな戦力です。価値観を揃えることに時間を惜しむことなく投資しています。始めた当初はあまりに忙しくなり時間が足りなくなりました。今までしてきた仕事は、仕事だったのかと自問自答するほどに(笑)

なるほど!勉強になります。他にも独特な取り組みはありますか?

私のチームでは毎月「衆目評価」というものを実施しています。1人が全員を、全員が1人を評価する仕組みです。衆目評価は、1人500点の点数を自分も含めた全員に配分します。金沢さん80点、水木さん70点といった具合です。集計された結果は毎月公表されています。上司の考えではなくチームの考えが反映されるので、本人たちの納得度が高い評価になります。

私はこの衆目評価をもとに毎月面談も行っています。1人ひとりの評価がもっと上がるようにアドバイスをしている訳です。また、衆目評価に現れない頑張りを聞き、それを公の場でさりげなく話すようにもしています。この毎月の衆目評価や面談が賞与に直結する仕組みです。毎月の評価の積み重ねが賞与になるので、賞与の金額にも納得感が生まれるのだと思います。

毎月の評価の積み重ねが賞与になるので、賞与の金額にも納得感が生まれやすいんですね。

ただ、決まった金額の10%を上下させる権利は私が持つ、というルールにしています。たとえば、皆が決めた金額が40万だとしたら、36万~44万までを私が調整するという形です。下げるにしても上げるにしても面談で話をしますが、普段から皆には、だから上司におべっか使わないといけないよと言ってます(笑)

トップに立つ人間に必要な要素やご自身が心掛けていることはありますか?

「諦めないこと」と「伝え続けること」だと思います。上司とは、同じことを何回言えるかが重要なのではないでしょうか。上司失格だなぁと思う人の中で、「あいつは何度言ってもやらない、言わないとやらない」という人がいます。「そうなんですか、何度くらい言ったのですか?」と聞くと、「…2、3回です。」と言われたりします。

要は、1回or何度も になってしまっているのだと思います。私は、諦めずに分かるまで何度も何度も伝え続けることが大切だと考えています。

トップというのは、非常に根気が必要なんですね。

すごく根気のいる立場だと思います。諦めるのは簡単です。トップであれば人事権もある訳ですから、ダメだと思ったら怒鳴って怒って辞めさせてしまうことも出来ます。実際に過去の私自身もその様な「北風のマネジメント」を行っていました。

例えば田中さんに「お前、やる気ないんだったら辞めてまえ!」というのは簡単ですが、その田中さんを一所懸命に教えていた上司もいる、田中さんを慕っていた仲間もいる。田中さんを通して今残ってくれている仲間にも悪いことをしているというということを、昔の私は気付けていませんでした。私だけで育てた訳ではなく、皆がいたから育ってきてくれたのに…

しかし、昔の私はこの方法は愚かであるということに気付かずにすごしてきた結果、人が育たなかったり、仕事の充実感を味わえない「やらされ感」のある人材にしてしまっていたのです。今は人を育てるのには3年や5年という期間は必要だなぁと実感していますが、何とかなるもんです!

北風のマネジメントからの転換期というのは書籍に書いてありましが、教えて頂いてもよろしいですか?また、北風のマネジメントから太陽のマネジメントに変える時、かなり努力が必要だったんですか?

結局、売上が上がっても誰も喜んでいない。喜ぶのは会社だけ。私が事務所に行くと空気が一変してピリピリっとなる。昔はそれが上司だ!それがかっこいいと思っていたんですけどね。だけど、心は寂しかった。みんなが飲み会を開いていても誘われたこともないし、飲み会ではわたしの悪口を言っているというのも聞きました。その時は大人の振りして「えーねんえーねん。ガス抜きも大切や」って口先では言っていたけど、内心とてもショックでした。

それだけ嫌な思いをさせている部下にいい思いをさせてやりたい!という事で日本一の店舗を目指そうと。結果として、元々私がしたかった事を押し付けていただけだったんですが。でも、それが彼らの幸せだと思い込んでいたんですね。

「日本一になりたいやろ?」と聞くと「はい」と答えるもんだから、なるために私ももっと応援することになるんです。それは叱責、罵声、追い込みというという応援だった訳ですが(苦笑)

その思いも実り、「TSUTAYA5つ星店長コンテスト」にて私の部下が日本一の店長になりました。やっと喜んでもらえると思ったのに部下は全然嬉しそうじゃない。

ああ、いい店長になって欲しいっていうのは、自分にとって都合の良い店長を作ろうとしていただけだったんだなぁと気が付きました。これじゃダメだ、変わろうと決意するわけです。今思い出して見ると、変わるのに5年も掛かってしましました(笑)でも、あの充実感のない上司時代に戻りたくない一心で、がんばってきました。

店長さんたちに求めている、1番大切なことというのはなんですか?

素直さです。

決めたことは全力でやろうよと店長たちには話しています。同じことを言っていても言うタイミングによって提案・文句・改善になるんです。それはどういうことかと言うと、トップが決める前までに言うのは提案。決めた後に言うのは文句。やった後にここを変えた方がより効率的になるからと言うのは改善です。

意外と、決めた後に言うのは文句であるということに気がついていない人は多いです。トップが決められたことをまず素直に実行するという事は、結果的に良くても悪くても必要なことだと思います。そこからしか改善はうまれませんからね。

なるほど。ありがとうございます。少し話は変わりますが、好きな言葉は何ですか?

正に先ほど書いた「夢があるから顔晴れる」です。

書籍にサインをいただきました!

顔晴れるという字が特徴的だと思いますが、あえてこの文章を使う理由はなんですか?

頑張るという字=「我慢する」という意味なんです。例えば、売上を上げるために頑張るというのは=「売上を上げる為に我慢する」という意味。つまり、売上を上げるために休日出勤をする、徹夜で作業するということも当てはまると思います。

でも結局、そのやり方だと人も疲弊していって上手くいかない。市場がシュリンクしている状態の中ではもっともっとうまくいかない。次第に何のために働いているのかというのが分り辛くなっていく。そういう頑張るは嫌だなぁと。そうではなくて、顔が晴れる、笑顔で働ける環境を創りだしたいと考えています。

また、夢というのは目的+ワクワク感であると私は思っています。つまり、目的に+ワクワクする事でそれが夢になる。そうすると我慢するのではなく顔が晴れて、きっと笑顔で働けると思います。そういった素敵な仕事が出来るように日々心がけています。

黒岩さん自身の夢はなんですか?

夢を語り出すと朝までかかってしまいますが…(笑) 夢の1つをご紹介すると、全国の児童養護施設を回って、自分と同じ境遇の子どもたちに「大人になったらめっちゃ楽しいねんで!めっちゃときめいてんねんで!きらめいてんねんで!」ということを伝えに行くということです。

実は私自身も、中学を児童養護施設で育ちました。入った時、自分の人生詰んだ、もうどうでもいいやとネガティブに思っていました。でも大人になったら違いました。そんなことはない!大人になったらめっちゃ楽しい!と気付けたんです。 しかし、現実的には児童養護施設で育った子どもは人間関係に非常に不安を覚えることが多いそうです。結婚に対しても一般家庭で育った子どもの5倍不安を感じるとのことです。

児童養護施設にて話をする機会を頂いた際に、「春から、僕の娘が小学校に入学するんだよ」と話したら、40人位いた子どもたちからドーッと拍手喝采を受けました。同じ児童養護施設で育った私が家族を持って、子どもを育てている、ということが子どもたちからするとすごいことなんだということを気付かされました。 その時、私は児童養護施設で育つ子どもたちに、これから来る未来の素晴らしさを、夢を伝える活動を行いたいと決めました。私の使命だと感じています。

素晴らしい夢ですね!

しかし、その活動を行うと決めた時にインターネット等で場所や手段を模索した結果、成し遂げるには3,000万円以上の資金(交通費等)が必要だと分かりました。これはどうすればいいんだ…と考えていた時に、別件でちょうど会社からセミナーをやってみないかと打診されました。ピーンと、これだ!と思いました。 全国に講師として呼んでもらえる様になったら、その全国先々の児童養護施設で、子どもたちに夢を語ってあげられる。だから、全国から呼ばれる講師になる事を心に決めたんですよ。

ありがとうございました!

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