連載コラム【選ばれる店舗づくり】 パチンコキャリアアカデミー
本日は、週刊アミューズメントジャパン様に掲載していただいている連載コラムをお届けします。
≪スタッフ主導で現場を変える≫
前回は、年間約500店舗分の調査報告書の中から、お客様への素晴らしい対応について、スタッフ全員が共有したことで接客レベルの向上につながった事例をご紹介しました。今回は、改善点の明確化から改善までの事例をお伝えします。
ホール企業Aは「接客は最低限できていれば良い」という方針で指導を行ってきました。人事部長が考える「最低限」がきちんとできているかどうかの確認のためにミステリーショッパーを実施したところ、報告書には下記のようなコメントが記載されていました。
入店した際に、すぐ近くにいたスタッフは、横目でちらっとこちらを見て、すぐにもとの方向に向きなおっていました。また、何度かカウンターの前を通りましたが、お客様に対して挨拶をしている様子はありませんでした。しかし通るたびに視線は感じたので、どちらかというと監視されているように感じました。このような対応を受けると、自分はお客として歓迎されていないのかと思ってしまいます。
お店の第一印象を決定づける入り口での対応、そしてカウンター前を通るたびに感じる無言の視線。上記のような感情を抱いたお客様が再来店する可能性は極めて低いのではないでしょうか。接客への取り組みの第一歩は「また来たい!」と思う人を増やすことよりも、「もう来ない!」と思う人を減らすことです。
「お客様の入店時や、カウンター前を通るお客様には笑顔で元気に挨拶をしよう」とスタッフに指示を出すのは簡単です。言われてすぐはスタッフも実行するでしょう。しかし、数カ月経つとまたもとに戻ってしまうケースが多いのではないでしょうか。また、カウンター前を通るたびに、誰彼構わず大きな声で挨拶したら、逆に不快感を与えてしまうこともあり得ます。
「どう改善したらよいのかわからない」と、ホール企業Aの人事部長から相談を受け、スタッフ研修を実施させて頂きました。第一印象の重要性や目線が与える印象の違い、笑顔や挨拶の効果など、「なぜやらなければいけないのか」「こうされたらどう感じるのか」を理解、体感してもらう内容です。
行動ひとつひとつの意味を理解した結果、スタッフからは「やらされている感」がなくなり、「入店時は笑顔で元気に挨拶をする」「カウンター前を通るお客様にはアイコンタクトをとり笑顔で会釈をする」など、様々な場面での応対ルールを自分たちでつくることができました。
「決まったマニュアルがあるから」「こう教わったから」ではなく、「こういう理由があるから」「自分たちで決めたから」ということがポイントです。宣伝広告規制の運用の明確化以降、「どのように来てもらうか」よりも「どのように帰ってもらうか」が重要になりました。お客様の反応を直に感じ取っているのは、事務所でPCやモニターを見ている役職者よりも、現場で走り回っているスタッフなのです。その後、ホール企業Aではスタッフが定期的にミーティングや研修を行い、「スタッフみんなでつくるマニュアル」が定着しつつあります。
ミステリーショッパーも研修も、改善の「きっかけ」にすぎません。改善点を明確にし、実際の改善につなげることが重要なのです。次回は「ミステリーショッパーの落とし穴」についてお伝えします。
