木下物産株式会社、木下大佑常務 TOPから学ぶ前編
木下常務が入社したのはいつですか。
大学卒業後してすぐです。何となく跡を継ぐということは決めているけど、他社で経験を積むのか、すぐに入社するのか、入社するタイミングは少し悩みましたね。
ただ、父が高齢だったのと、会社業績があまり良くないという話は聞いていたので、少しでも役に立てればという考えで決めました。
家業がパチンコ店を営んでいることはいつ知りましたか。
物心がついた頃から知っていました。ビジネス内容云々よりも、家族の役に立てればと思って入社したので、極論ビジネスが何であっても良かったのだと思います。
入社した時のポジションは?
入社後は本社勤務し、経営に必要な様々なことを学びました。今の役職になったのは24歳の時です。
入社前とのギャップはありましたか。
入社したら、あれをしなさい、これをしなさい、と色んな指示があるもんだと思っていましたが、実際には何もありませんでした。
仕事を振られることもプロジェクトを任されることもなかったので、最初は何をすれば良いのか分かりませんでしたね。
苦労したことはありますか。
現場の良くないことに対して変えて行こうと色々手を打つも全く手ごたえがないことでしょうか。手応えが無いというのは、上手く行かない以前の問題で、現場からのリアクションが全くないことなんですよね。
反対してくれれば折り合いを付けられるのにそれもない。これをやろう、分かりました、数ヶ月後に確認すると何も進んでいない。理由が分からないけど上手く行かない状態が1年近く続きました。
木下大佑/木下物産株式会社 常務取締役。大学卒業後に父の運営する同社へ入社。兄弟の中で木下常務だけが男だったということもあり、小さい頃から継ぐことを意識していた。
これはどういうことですか?
後で分かったのは、指示を出し、分かりました、返事だけして放置というサイクルになっていたということです。
これは古参社員からの反発で、変えることが嫌だったのでしょう。新しいことを進めると、やることが増えるし、それこそ上手く行ってお客さんが増えたらもっと大変になる。今を維持するために、静かにしているような感じで、これには3年間くらい苦労しました。
この状況をどうやって打破しましたか。
めげずに続けることです。自分がやらなきゃ誰がやると使命感に燃え、懸命に動きました。そのために、まずは従業員一人ひとりと深く会話しようと思いました。ただ、これがきっかけで考えが180度変わることになります。
ある社員と話して、こういう風に変えて行きたいというプランを伝えると、そのプランは自分たちにはできない、だから変われない、でも自分たちがいないと店舗運営出来なくて困るのは常務たちですよね?と言われました。つまり、俺たちはこのままやる。いなくなると困るのはあんた達なんだから静かにしていろと。
なんて負のエネルギーをため込んだ会社なんだと悲しくなりましたね。この出来事をきっかけに、今いる人材を変えようという考えは辞めました。
これは大きな出来事ですね。
でも、会社を良くするには変えなければなりません。色々考えた結果、たどり着いたのが新卒採用です。新卒で採用した人材を1店舗に集めてプロパー社員だけで運営。それを成功させて、残りの店舗に広めていくという作戦です。
ただ、この作戦にも問題があって。それは、当社が新卒採用をしたことが無いのと、知識が全くないので、何から始めればいいのか全く分からなかったのです。
なるほど。
それであれば、新卒採用を任せ得る人材が必要なので、まずは本社勤務の事務員を中途採用しようと決めました。
この時に採用できたのが、現在営業統括を任せている者です。パチンコ店の勤務経験が豊富なのに、なぜか事務員の募集で来てくれて。何でも、当時の心境は裏方勤務したかったとか笑。面接をするととても優秀で、次第に営業トップのポジションで採用したいという想いが強くなりました。
ただ、当時の社員は全く言うことを聞かない、統率のとれない組織です。約80人の社員がいましたが、その中で私の意見に賛同してくれる社員は5人くらいしかいません。かなり難しいけど協力してほしいという気持ちを伝えたところ、入社してくれることになりました。
この時はとても嬉しかったですね。
営業統括が入社してから、直ぐに新卒採用を始めたんですか?
いいえ。少し作戦を変えて営業統括と出会えたように、中途採用で良い出会いがあったので、このまま中途採用で組織強化しました。まずは全7店舗の店長を採用し、その後店舗の2番手、3番手を順次採用する方針に切り替えました。
その結果、新しい社員が入ると変わることに反発していた古参の社員はほとんどが辞めました。人が入れ替わる時期は多少の混乱もありましたが、新しく入社した人材が経営陣の考えを理解し、店舗をリードしてくれたお蔭で会社は大きく変わりました。現在の社員の半分近くがここ2年で入社した人ばかりです。
会社の転換期ですね。
はい。さらに、組織が安定したことで、ようやく新卒採用に着手できました。17卒の新卒採用から始まり、今年は1期生3名が入社してくれました。来年は6名が入社することになっています。
組織が変わったことでの成果は何ですか。
シンプルに業績が上がっています。全く言うことを聞いてくれなかった頃、3年前が過去最低の売上でしたが、現在は3年連続増収増益、毎年5%~10%の勢いで成長しています。
パチンコ業界を見ると直近3年では売上が下がっている会社がほとんどです。そんな中で当社はV字回復しているので大きな自信になりました。
今年は12月1日に新店をグランドオープン。思い描いてはいましたが、ようやくここまで成長できたと感慨深いものがあります。
まさに快進撃ですね!
組織が変わり、数字が良くなってからは、社員が前向きな思考になっていると感じます。私だけでなく、社員も成功体験を積んだことで自信をもったのだと思います。
社員のモチベーションが高いから発言も活発になり、現場主導で新しい取り組みや改善プランが進むようになっています。中途採用をして良かった。本当にそう思っています。
後編に続く