株式会社のぞみ総研 日野取締役、小峰執行役員
小峰望(右)/株式会社のぞみ総研、のぞみ合同事務所 執行役員、行政書士。大学卒業後、行政書士となり独立。
のぞみ合同事務所
2004年、小峰望さん、今村正典さん、日野孝次朗さんの3名でのぞみ合同事務所設立。2008年、行政書士という枠にとらわれることなくクライアントの多様な要望に応えることを目的とした株式会社のぞみ総研を設立。法務の専門家としての経験や知識を生かしながら、親しみやすくわかりやすいパートナーとして、行政手続の代行だけでなく、クライアントのコンプライアンスを支援している。
本日はよろしくお願いします。まずはのぞみ合同事務所設立のきっかけからお伺いできますか?
2004年にのぞみ合同事務所を立ち上げました。行政書士は個人の独立営業がほとんどです。のぞみ合同事務所立ち上げ前は私たちもそれぞれ個人で仕事をしていました。
合同事務所立ち上げのきっかけは、それぞれが一人でできることに限りがあると感じていたからです。行政書士は業務範囲が広く、一人で全て行おうとすると、浅く広くなってしまいます。3名の合同で業務を行うことで、それぞれの得意分野に専門特化することができるのではないか、ということで事務所を立ち上げることになりました。
これまで一人で行っていたことを3名で分業をすることになったことで、私は風営法に専念でき、さらに専門性を高めることができるようになりました。(日野氏)
パチンコホール企業さんとお仕事をされることが多いとのことですが、どのようなきっかけだったのでしょうか?
行政書士として働き始めた事務所が警察署の隣だったことから、風営法に関連する行政手続の代行依頼も多く、それがきっかけで風営法に詳しくなっていきました。(日野氏)
私はたまたまお世話になった行政の担当者に紹介して頂いたクライアントが、パチンコホールさんでした。その後もパチンコホールさんとお仕事をする機会が多くなっていきました。パチンコホールさんの行政手続の代行業務は、警察との関わりも多く、そこで知り合った方が退職後にのぞみ合同事務所に加わってくださいました。OBが事務所に入ってくださったことで、業務の領域はさらに広まったと思います。(小峰氏)
行政手続を行う上で、行政がどんなことを考えているのか、どんな立場なのか、などを理解することは重要です。OBの方が入ってくださったことでそういった知識を得る機会が増えました。どうしても警察の立場上、パチンコホールさんに伝えにくい部分があるのですが、そこが適切に伝えられるように努力しています。
よく、「警察はパチンコホールをつぶそうと思っている」といった話も聞きますよね。ですが、実際にはそのように考えているわけではなく、法律を守っているかどうかを監督するという義務を果たしているにすぎません。ですが、それがパチンコホールさんには伝わらないので、両者の間で不要な摩擦やすれ違いが生じることもあります。そこをなんとか減らしていきたいです。(日野氏)
風営法に関連するセミナーをされることが多いかと思うのですが、いつ頃から始められたのでしょうか?
2006年の風営法改正のときに矢野経済さんからの依頼で初めて開催しました。風営法についてのセミナーをできる人がいないからということで呼んで頂きました。2006年の法改正では、遊技機の無承認変更に対する罰則と行政処分が厳格化され、許可取り消しリスクが高まりました。
しかし、当時はクギ調整が無承認変更にあたるという認識がなかった時代でしたから、「クギ調整はリスク」という話をしても、あまり反応はよくなかったです。メンテナンスをして何が悪いのか?という感じです。今では無承認変更が業界にとって重大な問題となり、風営法を重視するパチンコホールさんも増えてきました。セミナーを通して、実際的な風営法の考え方などを伝えていきたいと思っています。(日野氏)
のぞみ総研では、法務コンシェルジュサービスを行われていますが、これはどういったサービスなのでしょうか?
風営法のセミナーを開催するようになり、お問い合わせをたくさん頂くようになりました。相談内容は多様で、行政手続の代行だけでは対応できないことを痛感しました。そこで、行政書士の枠にとらわれないコンサルティングサービスとして、株式会社のぞみ総研を設立し、「法務コンシェルジュ」を開始しました。現在はホール周辺企業も含め100社以上の事業者様にご利用いただいています。
このサービスでは、必要に応じて情報提供もしますし、様々なご相談にお応えしています。例えば、女性用トイレに置いてある生理用品を持ち帰られてしまうとか、お客様とのトラブルなど、現場で起きる日常的な問題にも対応しています。
私たちと電話でやりとりするだけでも、法令の考え方が伝わるし、客観的な視点も徐々に身についてゆきます。セミナーや研修も重要ですが、一番効果が高いのは1対1のやり取りなのです。(小峰氏)
様々な相談がありますが、もめ事の場合はむやみに法律の問題にしないようにもしています。結局は人と人の問題なので、お互いが納得できるように解決していただきたいです。また、「なんでも相談してください。」とは伝えていても、ご契約当初は相談が多くないこともあります。たぶん、いろいろご遠慮があるからだと思うので、そういったクライアントさんには私たちの方から電話をかけて、困っていることがないかなどを聞いていますね。(日野氏)
パチンコホール企業は、「営業停止」に非常に敏感かと思うのですが、対策は何かありますか?
いきなり営業停止になることはほとんどありません。何度か注意を受けていて、それでも改善できていないときに営業停止となります。問題は、そういった「注意」を適切に受け止められるかどうかです。(小峰氏)
警察も営業停止にしたくてしているわけではなく、風営法を遵守しているかどうかの監督責任があり、仕事として行っているだけです。ですから、注意を受けた場合に適切に対応していれば、いきなり営業停止になることはまずありません。
警察も人なので、普段からきちんとしていることも大事です。日ごろからきちんとしているお店に、重い処分を出したいと思う人はいませんからね。また、営業停止が決まってしまった場合でも、会社として精一杯の誠意を見せることで、最悪の事態を免れ得ることもありえます。(日野氏)
撤去問題などもありますが、今パチンコ業界に対して思うことはありますか?
10年前は誰も今のようになることを予想していなかったのかもしれません。しかし、風営法の許可を受けている以上は、風営法を守って営業することは当たり前のことです。ホール業界は大きくなったし、同時に日本はコンプライアンス社会になりました。私としては、業界がこれまで風営法を軽視してきたことのうみが今出てきているという感覚です。
法律や通達を自分の目で確認しているかどうかは重要で、イメージだけで「やってよい、だめ」を判断してしまうことは危険ですし、もったいないことです。パチンコホールは、風営法に基づいた営業規制の中で競争していかなくてはいけないので、法律の知識があった上で戦略を立てていく必要があります。私たちは経営判断の材料として、風営法の知識や、行政側の考え・立場を伝えていきたいと思っています。(日野氏)